ヒーローエルフともてもて狼ボーイ

エルフマン

第1話 エルフのヒーロー、エルフマン見参!

等々力電斗、年齢25歳



職業探偵。

頭脳明晰・・・、というわけでもないが、空手で鍛えた体力と地道な調査により、依頼人からの難題を何度も解決してきた男である!

といっても、大した事件はあまりなく、その大半は迷子のペット探しだったり、素行調査だったりだが・・・。



だが、彼には重大な秘密があった!




ある日、仕事帰りに火事に遭遇した彼は、燃え盛る家屋の最上階に子供が取り残されていることを知った。

周囲の人間が危険だというのも顧みず、火災現場へ飛び込み見事子供を救ったのだが、自分だけ逃げ遅れて結果として命を落としてしまった。

走馬灯がよぎる中、電斗に語り掛ける存在がいた。


その存在こそが、魔法の力に満ちた異世界「グランタジア」にからの使者、大自然の精霊たるハイパーエルフであった。

電斗の勇気に感動したハイパーエルフは、電斗にその力を授けた。

同時に、グランタジアより何者かが地球を狙っており、その力で防衛しなくてはならない、という警告とともに・・・。


かくして、電斗は大自然の魔力を纏い、人間とエルフの中間たる超人、エルフマンへ変身する力を身に着けたのであった!!!






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その日、OL武藤沙織は暗い夜道を一人で歩いて帰っていた。

会社の飲み会があり、最寄り駅から徒歩での帰宅であった。

こんな遅い時間であるから、その駅からタクシーをとるべきなのであろうが、飲み会という手痛い出費があった彼女は少しでも費用を抑えたいという気持ちが勝り、今現在に至るのであった。


少し後悔していた。

この道は何度も歩いたことがあるが、この夜更けでは人通りが全くなく、かなり心もとない。

街頭は複数あり、歩く箇所は明るくなっているが、道の脇には多数の樹木があり、その奥は漆黒に染まっている。

ちょっとした公園でもあるため、緑溢れる場所で、日中は大変眺めが良いのだが、この深夜では帰って闇を抱く箇所が多く、一人で歩く彼女の不安感をいたずらに煽った。


風が吹き、茂みがガサガサと揺れるたび、ビクっとしてしまう。



(はー、やだやだ。早く通り過ぎちゃお。)


彼女が早足になるのも自然なことであった。





(やだ・・・、さっきから付けられてる・・・?)


沙織が後ろから付いてくる足音に気づいたのは、それから間もなくであった。

不気味に思い、足早に歩くスピードをさらに加速する。

同時に着けてくる足音も早くなる

(ちょ、ちょっと!やだやだ!!)

ここで沙織も、不安と同時に怒りがわいてくる。

相手がどんな変質者か知らないが、一度睨みつけてやろうと振り返った!




「え・・・?」





沙織は気の抜けた声しか出なかった。


何故なら、そこにいるのは、世にも奇妙な存在・・・。

いうなれば・・・、


エビ男が・・・、いたのだ・・・。




それは本当に奇妙な風体であった。

筋肉質な肉体に、エビの頭部。

体からはところどろこ棘が生えている。

一瞬着ぐるみか、何かたちの悪い悪戯かともよぎるが、なんというか、非常に生々しかった。

頭部の甲殻の薄い箇所から除く、何らかの器官が、呼吸に合わせてピクピク動いているのが見える。

作り物にはとても見えなかった。


「きゃ、きゃあああああああああああああああっ!!!!!!!!!」


沙織は瞬間、悲鳴を上げた。

逃げなきゃ、と思ったが、足が動かない。

気づくと座り込んでいた。

あまりの驚きと恐怖に、腰が抜けてしまったらしい。


「い、いや・・・。来ないで・・・。」


沙織の懇願もむなしく、エビ男はギチギチと音を口元から立てながらゆっくりと近づいてきた。

そして、ジャキン!という金属音のような音とともに、その手から棘が伸び、まるで剣のように変形した。

「グ、グギギチチ・・・!」

沙織は死を予感し、涙があふれた。



その絶望のときであった。




「まてーーーーーーーーーいっ!!!」




勇猛に声を上げる男がいた!

等々力電斗である!


「ギチチ!?」

突然の参入者に、エビ男も驚きを隠せない。

人語を話さないが、「誰だ!?」と言っているようだ。


「いいだろう! グランタジアから来た魔獣め!名乗ってやるぜ!」



電斗は、おもむろに懐からアーチ状の物を取り出した。

それはエルフチェンジャー。

ハイパーエルフによりハイパーエルフ細胞(その細胞を持つものは、大自然中の魔力を自在に操ることができるのである)を体に埋め込まれた電斗は、このエルフチェンジャーを使うことでその力を開放することができるのだ!!


「エルフ・チェンジっ!!!」


そう叫ぶと、エルフチェンジャーを掲げる。

すると、エルフチェンジャーが光り輝き、電斗はその光に包まれる!!


刹那、凄まじいパワーにより周囲の大気の一部がプラズマ化し、バチバチッ!とスパークした!


そこに立っていたのは、エメラルドグリーン調の、ピッチりとしたヒーロースーツに身を包み、白銀のマスクから、ファンタジー小説に登場するエルフの如く、長い耳を覗かせた戦士であった・・・!



「魔法超人!! エルフマンッ、見参っ!!!」



https://kakuyomu.jp/users/elfman_E1/news/16818093093906466128



唐突に表れた超人に、エビ男も、無論沙織も驚愕していた。

沙織に至ってはもはや状況が全くの見込めず、今にも気を失いそうだ。

だが、その顔からは不安がやや、和らいでいた。

エルフマンと名乗ったその男は、なんとなくであるが、悪人ではないと感じていた。

それは、沙織が幼少期に見ていた特撮ヒーローを感じさせるコスチュームにエルフマンが身を包んでいることのみならず、エルフマンから清浄なる霊力が放たれていることも一因であった。

沙織に知る由もないことであるが。

だが、エルフマンを見ているだけで、何か、こう、心の奥底から希望が湧いてくる気がした!


「ギギチチギギチチギギチチ!!!!!」

エビ男もようやく我に返り、その獰猛な怒りをエルフマンへ向けた!

激しく雄たけびを上げ、猛烈に突進する!

その手先の棘の剣を受ければ、たちまち絶命してしまうだろう!


「ふん!」

だが、エルフマンには通じなかった。

片手でその剣を掴み、まるで猛牛バッファローさながらであった突進を容易く止めてしまったのである!!

さらには


バキィ!!!!!


その剣を砕いてしまった。


「次はこちらの番だ!」

そういうと、鋭いパンチをお見舞いする。そのままもう一発。華麗なワンツーパンチ。

その強烈なパンチは、エビ男の鋼鉄に近い硬度を持つ甲殻も砕く。

悶絶するエビ男。

エルフマンはさらに、そこへ回し蹴りをお見舞いした!

 

「ゲギョ~!!」


エビ男は吹っ飛び、情けない声を上げる。

もはや満身創痍であった。



だが、ふっとばされたことで、エルフマンとの間合いができていた!

エビ男は瞬時に狙いをエルフマンから、沙織へと変更した。

沙織を素早く捕食して栄養を補給し、パワーアップすることでエルフマンに対抗するつもりであった。



だが、それもエルフマンにはお見通しであった!


「はぁぁぁぁぁあああああ!」


エルフマンは大自然の魔力、マナを拳に集中していた。

その拳がマナにより、青白く輝く・・・。


「これで終わりだ!! 必殺!! エルフビームっ!!!!!!」



そう叫ぶと、その拳から、凄まじいマナの奔流がほとばしった!!

その凄まじさに轟音と、激しい砂ぼこりが生じる!



「ギギチチギギチチギギチチ!!!!!」


そのビームを真正面から受けたエビ男は、体中から火花を吹き出し、

やがて


「ギッチーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


断末魔を上げ、爆散した!!!




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沙織は気づくと、病院にいた。

何でも、奇妙なヒーローのようなコスチュームに身を包んだ男が運んできたらしい。

病院関係者は怪しんで捕えようとも試みたが、風のように、一瞬でその場から消えてしまったという。


「夢じゃ・・・、なかったんだ・・・。」



こうして、この町には、スーパーヒーローエルフマンが知れ渡ることとなったのである!!

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