第3話 死神からの依頼 前編
その翌日の朝、私は友人の依頼を受け、店の前で待っていた。その友人は思ったよりも早く、私の前に現れた。
「おはよう、優火。昨日ぶりだね」
「・・・早くない?」
いや、待ち合わせの時間も設定されてはいたのだが、こいつはそういうときに限って遅刻することが多いからだ。実際学校で入学式に遅れてダイナミック入場をするという大失態をやらかしている。____私と一緒に。
「いやー今日はたまたまね、早く起きれたの。ほんとたまたまだからね?決して弟に起こしてもらったとかそういうわけじゃあないからね?」
なるほど。そういうことか。それなら納得である。あの弟はしっかりしてるし、それが仕事にも出ている。
実際、私が使っているナイフはあいつが作ってくれたものだ。強度、魔力のノリ、使いやすさ、何をとっても私の要望通り完璧なものとなっている。カルラの剣も彼が作成したものだ。
「まあいいや。早く行くよ。それなりに時間かかるし」
とは言っても、早く行けば本日中に着くはずだ。何もなければ、の話だが。
「そうだね、早く行こうか」
私達は出発した。歩きながらの旅というのもたまには悪くない。だが、こんな旅の最中に、なにも起きないはずがなかった。
それが起きたのは、歩き始めて2時間ほど立った頃だった。
背後にこちらを狙う魔力の気配、カルラも気づいているようだ。私はそれに向け前を向いたままポケットから取り出したナイフを投げる。
背後で金属音。どうやら当てが外れることはなかったようだ。
「チッ、感の良いガキめ、どうしてわかった?」
その音を出したであろう正体は、黒いパーカー姿に大きな鎌を持った、死神だった。
それをひと目見て、強くはないと確信する。
「いかにも、って感じだね。優火、任せていい?それほどでもないと思うし」
「いいよ。この程度なら肩慣らしには十分だ」
そう思い私はナイフを構える。リーチ差はあるが、別に大したことではないだろう。魔力的にも大した脅威ではない。相手の動きを見れば、やつを狩るのはそう難しくない。
まずは相手の横薙ぎに合わせ、背後に回る。そこから反転しようと背後に彼が鎌を振るが、空振り。その背後に回っている私は、そいつの手首につけていたバンドをよく見る。
「zen s30___間違いないな。」
そいつを見て、私はある確信に至る。だが、穏便に終わらせてはつまらない。
少しだけ、遊ばせてもらおう。
___注釈
・投げたナイフは、優火の魔法によって一定時間で回収されます。ただしそれほど傷んだり、使い物にならなくなっているものは少ないです。
・優火がひと目見て絶対に強くないと確信している理由は、死神の上澄み連中を見てきているからです。彼はそれと雰囲気がまるで違うし、威圧感や魔力量もないので、優火でなくても分かる人にはわかります。
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