第2話 影師

「______帰ったかな」


 カルラが帰ったことを確認し、私はイヤリング型の通話用結晶を耳につけ、ある人物と連絡を取る。


「もしもし、影師くん?いま暇?」


「______あんたか。今回は何の用だ?」


「前に頼んだ情報の確認と、新しく仕事がある」


「______報酬は?」


「ツケで」


 ツケと言っているが、金を払う気はない。誰だって恩師に金をせがむような輩はいないだろう。


「_____はぁ、仕方ない。わかったよ。確認するからちょっと待ってろ」


「わ〜い助かるぅ〜。あ、たまにはこっちに顔出してね。情報のすり合わせとかしたいし」


「わかってるよ。_____で、まずは情報から伝える。王都にいる魔族の情報についてだが、今はもう、ほとんどいない。住んでいたものも、どこかに行ってしまったな。王国からの招集があったらしい」


「そうだね。見かけることもなくなったし」


「次に、そっちの森の死神の出没率が高まっている。おそらく原因は、悪魔の処理のためだろうな。まあこれは、それほど気にしなくてもいいが」


「まあ、あの社長に思うところはあるけど、悪い人ではないしね」


「最後に、これは直接は関係ないが、王都内にあるいくつかのテロリスト集団が動き始めている。名前は確か___暗黒騎士ダークナイト連合だったかな。王都転覆を狙っているらしいが、リーダーの尻尾は未だにつかめない」


「あの連中は何考えてんのかわからんからね。なんかとんでもないことをやらかすかもしれないし」


「これで全てだ。で、新しい仕事は何だ?まさか任務への同行か?」


「同行なんてさせるために連絡したんじゃないよ。第一、あんたなんか戦力にすらならないでしょ。そのハイドスキルには目を見張る物があるけどさ」


「返す言葉もないな・・・で、結局何なんだ?」


「そうだね、今後王都でテロが起こる可能性が高い。君にはその決行日と人数、可能ならば相手の拠点の数を調べてほしい、できるでしょ?」


「______相変わらず無理を言うんだな」


「でも、出来ないとは言わないでしょ。それに関しては任せたよ。信頼してるから」


「そうか。報酬は払えよ。師匠」


「はいはーい、それじゃあね」


 そう言い私は通話を切った。

 



___注釈

・彼は情報屋です。一応。ただし副業としてやってます。

・ここで呼ばれている影師という名前は、コードネームであって本名ではありません。

・師弟関係にあったので、当然彼女にもコードネームはありました。コードネームは「時影」。

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