いきなり世界が崩壊しちゃった!世界を救う為には異世界に行かなければいけないようです

朝顔

第1話 崩れ去った日常

「おはようございます〜」

 今日も何気ない1日が始まる。

 “はぁ~、今日も1日が始まっちゃったな〜”

 気怠げに溜め息をきながら学校の廊下を歩いて行くのは小林真菜。



 この春、私立【星影学園】に入学した真菜は早速登校が億劫になっていた。と、いうのも

 “星影学園この学校の生徒って……やたらとキラキラした奴ばっかりなんだもんなぁ……”

 という訳である。



 【星影学園】は、いわゆる名門校という奴で、在学している生徒のほとんどは将来有望なお坊ちゃま・お嬢様、そうでなければ超優秀な天才・秀才・鬼才な連中ばかりである。そんな中に、まかり間違って平々凡々な一般人が一人紛れ込んでしまったのである。その肩身の狭さたるや、尋常ではない。

 “本当。私、何でこの学校に通っているんだろう……?”

 毎朝登校し、教室に入る度にそんな思いに襲われるのだ。



 真菜が【星影学園】を受験したのは、真菜本人が望んだ事では無く、両親の強い希望で受験する事になったのだ。

 “私。もっと身の丈に合った学校が良かったのに”

 真菜は溜め息を吐く。

 真菜は特別出来が悪い訳では無いが、何かが突出して秀でているという訳でも無い。

 一つ二つ周りより得意なものがあるが、その他は平均程度もしくはちょっと下、というごくごく普通の才能の持ち主でしかないのだ。

 そんな真菜が全国でもトップクラスの成績の連中がひしめく学校に入学したのは何かの間違いだとしか思えないのだが。



 しかし、そんな事をいくら両親や幼馴染に訴えても

「そんな事は無いよ」

「真菜があの学校に入ったのは間違いなんかじゃないって」

「自信を持って」

 といった言葉しか返って来ないのである。

 “皆。他人事だと思って……”

 そんな言葉を聞く度に、心の中でボヤく真菜であった。



「おはようございます、小林さん。貴女の教室はここよ」

 ふと後ろから声が聞こえた。ハッと我に返って振り返ると、そこでは真菜のクラスの委員長藤田法子が微笑って手を振っていた。

「あ。おはようございます、藤田さん」

 真菜は気不味げに挨拶を返した。



 どうやら真菜が物思いに耽りながら歩いているうちに教室に辿り着いていたらしい。それに気づかずに通り過ぎようとしていたので法子は声をかけて来たようだ。

「ふふふ。気にしないで」

 法子は微笑って真菜の背に手を回し、そっと押してきた。

「!?」

 これに驚いた真菜は、危うく奇声を上げそうになったがすんでで堪えた。


 そんな一幕がありつつ、今日も昨日と変わらない一日が始まった。



「はぁ〜〜!」

 今日の授業を終え、真菜は大きく息を吐いた。

 “はぁ〜! 授業に付いていくのも一苦労だよ〜”

 繰り返すが、星影学園は名門校。全国でもトップクラスのレベルを誇る学校なのだ。

 そんな学校の授業は、当然ながらハイレベルのもので真菜は毎日予習復習をしないと瞬く間に置いて行かれてしまうだろう。 

 今のところは何とか付いていけているが、いつ落ちこぼれてしまうか分からない。

 一瞬たりとも気を抜けない現状に、正直疲れてきた真菜である。

 はぁ〜、とまた一つ溜め息を吐き机に突っ伏した。



「小林さん、どうしたの? 溜め息なんか吐いちゃって?」

「!?」

 丁度その時背後から声をかけられ、ビクリと跳ね上がる真菜。

「……藤田さん?」

 声の主を確認した真菜は驚いて目を瞬かせる。

「ふふふ。驚かせちゃった? ごめんなさいね」

 法子は悪戯っぽく笑って真菜を覗き込んできた。



「いや、構わないけど……何か用?」

 真菜は、何故法子が声をかけてきたのか皆目見当がつかず首を傾げて問うた。

「うふふ」

 すると法子はニッコリ笑い

「わたし、小林さんとお話がしたかったの」

 そう言った。



「話? 私と?」

 真菜は怪訝な表情になる。言っては何だが真菜はクラスでも浮き気味で、入学以来必要以上にクラスメイトたちと関わった事は無い。

 対する法子は美人で優しく人気が高い。そしてクラス委員を務めている事でも分かる通り、誰とでもそつ無く付き合える優等生である。

 そんな法子が真菜に一体何の話があるというのか?



「そんなに警戒しないで?」

 何やら疑わしげな目で見つめてくる真菜に、法子は困ったような笑みを返し

「私。小林さんとお友達になりたいの」

 そう言った。



「は?」

 真菜は一瞬何を言われたか理解出来ず、ポカンと法子を見返した。

 “藤田さんが私と友達に? いやいや有り得ないでしょ”

 真菜はそう思い

「え? 藤田さん、私と友達になりたい?」

 と問うた。

 すると法子はニッコリ笑い

「ええ。私、小林さんと是非お友達になりたいわ」

 キッパリと断言した。



「……」

 真菜はポカンと目を瞬かせている。

「ふふ」

 法子は、そんな真菜を愛おしげに見つめたかと思うと

「小林さん……ねえ! 真菜ちゃん、って呼んでいいかしら?」

 グイグイ詰め寄って来た。



「は? え?」

 突然の申し出に真菜が目を白黒させていると

「ふふ。真菜ちゃんってば、可〜愛い〜!」

 と何故か身体をクネクネさせ始めた。

「……」

 真菜はどうしていいか分からなくなり、呆然と奇妙な反応を続ける法子を見つめるばかりであった。



 その時


 ドッカーーーーーン!!


 外の方から凄まじい爆発音のような轟音が響き渡ったかと思うと、通学バッグの中のスマホがけたたましく鳴り始めた。



「な、何が起きたの?」

 真菜は動揺し、立ち上がると

「真菜ちゃん、落ち着いて!」

 気がつくと真菜は法子に手を握られていた。

「……

 こんな時だが真菜は顔が紅くなった。

「逃げるわよ! 絶対に私から離れないで!!」

 そう言うなり法子は真菜の手を引き駆け出した。

 その際、忘れずに自分たちの通学バッグの回収を行った。これが後々自分たちの運命を大きく左右する事になるとは夢にも思わなかったが。



「ハァ、ハァ!」

 法子と真菜は学校から脱出し、辺り一面焼け野原になった街を駆け抜ける。

「……何でこんな事に?」

 真菜は法子に引っ張られながらポツリと呟く。

「分からない。だけど今は一か所に留まる事は自殺行為だわ……キツいだろうけどもう少し頑張って!」

 法子はそう言って更に走る速度を上げた。

「おわ!」

 更にグイッと引っ張られ足がもつれそうになったが、何とか踏ん張り必死に足を動かし続けるのだった。

 

 

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