引越

私はある事に気がついて玉緒に訊いてみた。


「それまでは会ってないよね」

私がそう言うと玉緒は不思議そうに頷いた。


「同じフロアだったのに」

そう言うと玉緒は笑った。


「引っ越してきたの忘れた?」

え、そうだったっけ?


「え、それって英語を教えてって言ったから?」

そう言うと玉緒は私を膝の上に座らせた。


「ちょうど引っ越しを考えてたからね」

私の背中に顔をうずめながら玉緒はそう言った。


「なんというナイスタイミング」

運命というやつなのだろうか。


「茉莉」

はい?


「なんでもない、ああいい匂い」

玉緒が深呼吸する気配が伝わった。


「玉緒は私の匂い好きだねえ」

私が呆れてそう言うと玉緒の笑う気配がした。


「そうね、大好き」

玉緒はそう言いながら私の腰を抱きかかえた。



美人お姉さんなのに子供か猫のようなお人である。

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