労働

「ダメ」

意外な事に玉緒はそう言った。


「なんで?」

私はそう訊き返す。


「学生は学業が本分です」

玉緒はらしくない事を言った。


「バイトくらいしないと家計に負担がかかるよ」

仕送りをなるべく低減したいという理由もある。


「そんなの大丈夫だから」

玉緒はきっぱりとそう言った。


「いいバイトだと思うんだけどなあ」

時給2700円。アルバイト経験のない私でもこれがめちゃ高額だとは分かる。


「ガールズバーなんて絶対ダメ!」

玉緒は目を吊り上げてそう言った。


「なんかそんな感じじゃなさそうだけどなあ」

私はちょっと口を尖らせてそう言った。


「その油断が大敵!」

玉緒はビシリと指摘した。


「そういうところから始まってどんどんそういう方向に行っちゃうのよ」

玉緒はそう断言した。


「コンビニは?」

私は当て馬として用意しておいたもうひとつの募集を指さした。


「コンビニなんて割に合わなさすぎ」

今度はそういう方向でダメ出しした。


「あんなに覚える事が多いのに時給1000円なんて絶対に割に合わないから」

玉緒はそう説明した。


「やったことあるの?」

私はそう訊いた。


「ないけどあんなの絶対普通の仕事より忙しいに決まってるから」

玉緒はそう断言した。



どうも玉緒はアルバイト全般に偏見がありそうだ。

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