第3話:なぜ苛立つ

 ひととのコミュニケーションで、一番いけないのが暴力だ。

 会話の中では、言葉を遮ること。

 でもやってしまう。


 黙って聞き流せばいい所もある。

 しかし、真剣に聞いていればいるほど、内容が頭にくることがある。

 12月の火事の現場を見て母が「ああ、やっと改修工事を始めてくれた。見栄えが悪いもの。助かった。せっかく家が売れたのに、目の前ががれきだと見栄えがわるいもの。見栄えが悪いとせっかくの……」


 というのでキレた!

「うるさい」

 と。


 当時、目の間の家の燃え盛る中、わたくしは猫をケージに入れて、抱えて逃げたのだ。

 公園だと冬の寒さが来るから、コミュニティハウスに頼み込んで避難させてもらった。

 体力的にも精神的にも大変だったのに、母はわたくしを一番最後まで放っておいて、熊本の叔母や遠方に住む妹に連絡していたのだ。


 一瞬にして思い出した。

 見栄え!? そんなもの! どうだっていい。

 あれは悲劇のモニュメントだったのだ。


 だから、平和のために改修する。

 そういう意味でわたくしは、よかったと思ったし、そうとらえたい。

 なのに、見栄え見栄えと、見かけのことばっかり! いらいらするわっ。


 そういうわけでキレました。

 でもたぶん、母はわけがわかっていないと思う。

 すべてはわたくしのこころの中のことだから。


 ああ、孤独っていや。

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