第8話 冒険者ギルドにて
無事街へと入ることができた俺は、って無事じゃない腕が…あざになってないかなーと腕を見る。じゃなくて次なる目的地冒険者ギルドへと歩みを進めていた。
身分証明書がないといろいろ不便だということが分かった俺はギルドカードを手に入れることを心に決めたのである。もう2度と腕を犠牲にはさせない。というかしばらくはもらったお金使って生活すればいいけどあまり自堕落にしているとお金没収もありえるし。自分でお金を入手する手段を確保しなければならない。そのための冒険者登録というわけだ。などと考えているとシスティアが話しかけてくる。
(あまりに自堕落が過ぎると、没収しますね。お金。その権限が私には与えられているんで。)などと生意気な表情で煽るように言ってくる。むかつく。
(えっ今私に向かってイラっとしました?えっ?)
(えっまさかするわけないじゃん。)真顔でそうとぼけてみるが
(次そのような態度とったら根こそぎ没収しますね。)ごまかしは通じなかった。
(というか、マスター冒険者なんかやめて盗賊とかどうです?)
(なぜに、悪の道に誘ってくる?)
(盗みも立派な仕事ですよ。生きていくためにはそんなきれいごと言ってられないんですよ。マスター。温室育ちのマスターにはわからないでしょうが。)
(それってもし俺がしたとしてみんな的にはどうなの?俺どう思われるの?)
(いやーマスターもいっぱしに盗みもできるようになって根性あって独り立ちしたなーって思いますよ。)
(いや、それ誰視点よ弱いものいびってるヤンキーじゃないんだから)
(えっそれ私のこと言ってます?私のことヤンキーって言ってるんですか?マスター?あんな小物どもと一緒にしないでくださいよマスター。私ならこの街ごと盗賊都市にして他の街を襲わせますよ。献上品を納めないゴミカス野郎はもちろん粛清対象です♡)
(いやそんな言い方してもかわいくないから、やってることえげつないしそれに別にヤンキーたちも愛情あってやってるわけじゃないと思うし。)
(私の場合は愛情でやってますよ。人々が平等であれと願ってやってるんです。だって不公平だとは思いませんか。かたや貧しくひもじい思いをしているのにもう一方では飽食と贅沢で満たされている。だから私は住人に盗みの術すべを教え厳しくも愛のある教育を施すんです。どんなに過酷な場所でも生きていけるように理不尽に屈さずに生きていけるように)
僕は唖然としてしばらく言葉を失っていると
(えっ冗談ですよ。マスター。冗談です。)
そういわれてもまったく冗談に聞こえなかったのは気のせいだろうか。こいつならマジでやりそうだし。てかこいつ俺が自分で生活できなかった場合最悪というかむしろ現状でも盗みをさせようとしてきてるし、なに?俺に盗みをさせて何が楽しいのーーー?
(でもまぁいい選択だとは思いますよ。冒険者。マスターのことだから普通に働くのは絶対無理じゃないですか?で盗みもできないとなると冒険者くらいしかないですよねwwwww)
(その冷めた笑いやめてくれる?ほんと)
くだらない談笑をしているとギルド前までたどり着く。いや談笑っていうより談泣だったけどね。こっちの心へし折りに来てたから。
ギルド前まで来て妙に緊張する。
(どうしたんですか?マスター?入らないんですか?)
思えば俺の基本的な性質は引きこもりで、一人でお店とか行ったことないし、行ったことない場所や始めてやることにとても抵抗を感じてしまう。
だからなのか今現在ギルドに入る手前でたじろいでしまう。
(マスター何してるんですか?早く入りましょうよー)
(もしかしてマスター、彼女とご飯食べに来て、注文を彼女にしてもらう系の男の子ですか?)
(お恥ずかしながら、そうです。)
(まったく)とあきれつつ ため息を吐くシスティア
(頼りなくてほんと情けないですね マスター)
(でも、もし私が隣にいたなら助けてあげるのに)
そうつぶやかれた一言からは妙に温かみを感じた。
決心をしギルドの扉を開ける。
中に入るとそこは日の光があまり入れられていないのか薄暗い場所だった。
まだ昼間なのに酒らしきものを飲みあかしている者、年齢性別さまざまな人たちがいた。
ここの人たちにとって俺が見知らぬ顔であるためか周囲の視線を感じたが
そのまま受付らしきところまで歩みを進める。
受付までたどり着くとなぜか少しだけ動揺をしていた女性が応対をしてくれた。
「えっと冒険者登録の方ですか?」
なぜこうも困惑したような表情をしているのだろうか?
俺がこの辺に住む人たちと違う顔つきをしているからだろうか?
でも俺がみたところちらほらと顔つきが違う人たちもいる。
なぜだろう?そう考えていると
(あのー)とシスティアが唐突に話しかけてくる。
(マスター、そういえば言い忘れてたことがあるんですけど)
(なんだ?)
(街に入る前に念のためといいますか、マスターに認識偽装を施したんです。)
(認識偽装?)
(はい、もしもの場合にマスターの顔や姿がばれないようにとの対策で)
(えっ)
(いま俺どんなふうにみえてんの)
思わず動揺してしまう。
(えっとたぶん14いや13かな?)
(まーそのくらいの少年です)
そういわれ愕然とするも
いろいろと納得のいくこともあった。
たしか騎士団長に少年と言われ少し気になってはいたし
そういえばなんか騎士団長優しかったなー
とか思い出せば思い出すほど合点がいった。
(それにですねマスター、たぶんですが童顔なのも相まって幼く見えているのかと。)
てか14歳とかはみんなまだ童顔だろーとか思いつつ
いろいろと納得したので手続きを進めていく。
「ではですね、冒険者登録には…」
と出された必要書類を埋めていく
すべての書類を書き終わる。
受付のお姉さんは一通り出された書類を見て
「えっとノアさんですね、書類に不備はなさそうですし、あと登録料として銀貨5枚になります。」
えっ銀貨?そんなもの持ってたっけ?金貨なら確認したけど
少し焦り気味になり慌ててシスティーに確認する
(システィー?、銀貨ってある?)
(申し訳ありません。マスター金貨しか必要物資には入っていません。)
そう言われ仕方ないかと金貨1枚を取り出し恐る恐る受付嬢へと差し出す。
「えっと金貨1枚ですね。銀貨5枚のお返しです。」
銀貨が渡された後、ギルドカードなるものを見せられ説明を受ける。
「これがギルド登録の証となるギルド証明書、通称ギルドカードになります。」
そう渡されたカードにはランクと書かれた項目があり
そこには「石ころ」とかかれていた。
(ランク、石ころ?そんなの聞いたことねぇよ。なんだよ石ころって。俺たちはその辺に転がっている石か。石とでも言いたいのか?)
(マスター。落ち着いてください。)
システィーは思わず平静を欠いた俺をなだめてくれた。
俺は少し動揺していたがそんなの受付嬢が知るはずもなく説明は続く。
「冒険者には、階級がありどの冒険者も最初はみんな石ころから始まります。」
「基本、自身の階級と同じ依頼を受けることを推奨しているのですが、1つ上の階級までなら受けることができます。」
「ギルドカードは通行許可証としても使うことができ、また依頼を受けるときにも必要になる場合がありますので大事に管理していてください。」
「ギルドカードの再発行には別途お金が発生するのでくれぐれもなくさないようにしてください。」
ギルドに関する基本事項を丁寧に説明してくれ最後にポノと名乗った少女は
「なにかわからないことがあったらまた聞いてください。」とにこやかな笑顔で答えてくれた。
必要事項を聞きなんとなく冒険者ギルドについて理解する。
(さてギルド登録も済んだし、これからどうするか…)
(依頼を受けてみたりしないんですか?マスター)
(えっいきなり依頼受けるの?今日の目的は冒険者登録じゃ?)
(そんな志低くてどうするんですか?マスター)
(この街のトップ冒険者になるくらいかまさないと、なめられますよ)
(まぁならなんか依頼でもうけてみるか)
そう思い受付嬢に何かおすすめの依頼がないか聞いてみる。
(おすすめですか?基本的に初心者冒険者への依頼は街の雑事、ちょっとした困りごとの解決とかですのでおすすめとかは…)と困った表情をしていたが
しばらく考えたあとひらめいたかのようにポンっと手をたたいて
「1つ上のランクになるんですけどスラリン討伐とかどうですか?」
「スラリン討伐ですか?」
「はい、街の周辺にはスラリンが生息していて、初心者冒険者がまず倒すモンスターといえばスラリンってくらい定番なんですよ。」と言いながら何やら絵が描かれた紙を見せてくる。
「これがスラリンです。どうですか?少しかわいいでしょう?」
スラリンの話になり少しだけ興奮気味に話すポニ、モンスターのことが好きなのだろうか?などと考えつつせっかくなので受けてみることにした。
「じゃあその依頼でお願いします。」
「では受理しておきます。」
「お気を付けて、無理はしないでくださいね」という声を背に出口まで歩みを進める。
ギルドから出るときになぜか見知ったような気がする少女と
すれ違った気がするが気のせいだろう。
(マスター、スラリン討伐なんて依頼、受けてもよかったんですか?シア様からは前回手も足も出なかったと聞いておりますが)
(苦くも楽しかった記憶を呼び起こさせないでくれ、といいたいけど昨日のことなんだよなそれさすがに忘れられないよね。)
(でも、受けちゃったからやるしかないし、ほかの依頼ってもっと面倒だったり冒険者っぽくなかったりしない?)
(そうですか?マスター 初心者冒険者として経験を積んだり、街のためになる立派な依頼ばかりではなかったですか?よりどりみどりかと思いましたが。)
(敗北を知って、なお無謀に勝てもしない戦いに挑むより堅実に地道にやっていったほうがいいと思いますけどね。だってマスターはほら石ころなんですから。)どうやらどの道を選んでもこいつに煽られるという道は変わらないらしい。
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