3-3. 蠍という少年
*
金髪のボブヘア、あの見下すような青い眼、肌の白さを強調する赤い唇。
蠍と呼ばれるには美しすぎる姿。
最初見た時は六つくらいで、髪も肩まで伸びていて、女の子かと思った。
そんな子供が、いつしか歴代の訓練生の中でも一番の成績を残し、精鋭部隊である「
部隊に配属されたのは史上最年少、十一歳。近接戦が得意で、実戦へ出せば、敵と三対一でも、蠍は平然と勝った。
「六匹の猟犬」
リエハラシアの古語から「狩人」と「六」と「犬」を繋げて作った造語。単語の意味だけを繋げれば「六匹の猟犬」と表せる。
初代メンバーが六人だったから「六匹」となっているだけで、メンバー数が二桁になったこともあるし、六人以下になったこともある。自分が居た頃、あの日あの時は、その名前通り六人体制だった。
当時のメンバーで一番キャリアが長かったのは、諜報担当である赤毛の男、コードネームは「狐」。
その次に、
そして最後に入ってきたのが、一番若くて近接戦闘にずば抜けた適性を持っていた「蠍」。
コードネームは「犬」に因んだ名前かと思いきや、そうではないから、やはり上層部のネーミングセンスはわからない。
しかし、犬に因んだ名前になるくらいなら、まだ「狐」だの「蠍」の方がマシだろうとは思う。
蠍は、その容姿の美しさから女だと思っていた者は多かったし、男だとわかっても人気ぶりは変わらなかった。いわばアイドル的な存在だった。
そして同時に、過剰とも言える敵への攻撃の執拗さは、周りを萎縮させ、その徹底ぶりは上層部にとても評価された。
だが「六匹の猟犬」に蠍が加入した当時は、揉めに揉めた。
蠍と狐は相性が悪かった。
この二人は長年、お互いに存在を忌み嫌っている同士だった。
放っておけば殺し合いになるだろう、と誰もが危惧するほどに。
任務のついでに、あの二人が「うっかり」互いを死なそうと動いたことは一度や二度ではない。
チームリーダーを任されていた狐は、蠍の加入を最後まで拒んだ。上層部が蠍を加入させると決定した際に、とうとうリーダーを降りた。
それでもチームに残ったのは、国軍総帥から強く慰留されたからだ。
誰とでも上手くやるように見せて、実は自分の主張を相手に認めさせて有利に事を進めるのが狐の性分だ。
だから、納得出来ないことには、徹底的に逆らう。
上層部のお気に入りの蠍と違って、狐はその性格も災いして、好かれなかった。
かく言う自分も、狐が嫌いだ。しかし、今日に至るまで腐れ縁が続いている。
狐は、こちらから情報や金を出せば仕事を全うする。蠍みたいな、手当たり次第、闇雲に攻撃するような、浅はかさがない。
好き嫌いは別にして、狐の情報収集能力と分析力はいつも頼りになる。
あの男は、仕事は一分の隙もなくやる。
蠍が、狐のもとへ真っ先に向かったのは、自分に繋がる情報を持っていると確信していたからだろう。
――蠍は、必ず自分のもとへ現れる。
フチノベ ミチルの監視をしながら、蠍が近づいてくる足音にも耳を澄まさなければならない。とても面倒なことになった。
ここは故郷とは違う。
砲撃を受けた町並み、その瓦礫の下に埋まって死んだ多数の死。故郷では、ニュースにもならない日常だ。
だが、
平和な国は素晴らしい。
だが、自分たちのような、きな臭い人間が生きていくには困難が多すぎる。
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