第3話 親の気まま

夕日が浮かび上げて来る境界線。

俺は商店街を通って、目的地へと足を進める。


毎日通るここの商店街に俺の顔を知らない人なんてほぼいないに等しい。


「おお!鴇蔭!部活はどうしたんだ!?」


よく荷物運びを手伝っては魚をくれるおっちゃんだ。


彼は俺が何かあったときは真っ先に心配してくれて、助けてくれる人だ。


魚屋のおっちゃんや商店街のみんなに心配されたくないので、足を止めて事情を説明する。


「こんにちは、魚屋のおっちゃん。今日は親に呼び出されて、部活を休んできたんだ」


「おお!そうか!鴇蔭が保宗さんに呼ばれるのは珍しいな!気をつけていってらっしゃいよ!」


「ああ、気をつけていってくるよ」


ちなみにこれは部活を休みたいからと、言い訳としてこれを使ったわけではない。


魚屋のおっちゃんの言葉通りに、親に呼ばれたこと自体が珍しく、気になってしまったためだ。


それで部活を休むことにした。


「おーい!鴇ちゃん!」


「こんにちは、肉屋のおばちゃん」


微笑んで、みんなから挨拶や心配をかけながら、商店街を抜けて行っていった。


///


「ここか」


それから数十分が経ち、鴇蔭はやっとの思いで目的地であるよく来るファミリーレストランに着くことができた。


彼は本当ならもっと早く辿り着いていたのだが、寄り道をし過ぎたようだ。


しかし、彼は清々しい気分で到着したので、結果はオーライというやつだろう。


でも彼は疑問を一つ抱えている。


なぜファミリーレストランに呼び出されたのかと。


何か目的があったにしても、ここに呼び出す必要はなく、もし大事な話なんだとしたら、家の方が断然良いし、何か頼みたいことであるなら、俺の気分を取るために俺の好きなものをメインとする少し高めなレストランの方が良い。


そう鴇蔭は考えてしまっている。


そうこういろいろなことを考えているうちに彼は親が座っている席に着いており、もうすでに座っていた。


彼は一度、呼び出されていた場所について、考えていたことを横に置いておいた。


そして、新しい疑問について、考え始まる。

なぜ席に座っているのが、親だけではなく、知らない人が3人もいるのかと。


しかも、そのうちの1人が碧薔薇学園の制服を着ている。


どれだけ記憶力が優れていない鴇蔭でも日常的なことは覚えているため、彼女が碧薔薇学園の生徒だとは判明することができた。


そして、大切そうな話し合いが開かれる。


「ではまず、うちのバカ鴇蔭が遅れてしまい、茉耶奈ちゃんを待たせてしまったことにお詫び申し上げます」


「いえいえ、こちらこそ、部活がある中で急に休まさせてしまったことに感謝申し上げます」


これは合コンかなと親同士の話し方が固いと感じる鴇蔭。


朝、鶏と戯れていた・ずっと気まずそうにしていた彼女いや茉耶奈は顔を下向けている。


「いえ、うちの鴇蔭は少し気が利くタイプですので、それぐらいは大丈夫です」


鴇蔭の母 遠藤 穂沙 (えんどう ほさ)は微笑んで息子のお世辞を言う。


彼女は気が利くタイプの人間ではないが、とにかく元気であり、周りから好意を持たれるタイプの人間である。


「いえいえ、うちの茉耶奈だって、気が弱くて、そんなこと言えないと思うので、そんなこと気にしていないと思いますよ」


茉耶奈の母 桜木 彩奈 (さくらぎ あやな)もお世辞を言っているつもりなのだろうが、こっちはこっちでディスっていると鴇蔭は感じた。


彩奈は悪口を言う人間ではない。

ただ単にバカなだけである。


「ではまず2人とも挨拶とお名前をお願いします」


場を仕切り始めたのは茉耶奈の母 彩奈さんだった。


これから何かが始めるのだろう、と同時にお名前をお願いしますとはどうことなのだろうか。


鴇蔭はとりあえず自己紹介をしろという理解をして、それをする。


「こんにちは。碧薔薇学園2年の遠藤 鴇蔭です。僕はサッカーが趣味で部活動もサッカー部です」


鴇蔭は礼儀に関してはちゃんとしているため、年上であっても身分が高い方であっても良いように、最初から敬語を使って、丁寧に自己紹介をした。


彼女は恥ずかしい過ぎて、何も聞いていなかったのだが、鴇蔭の自己紹介は聞いていたので、とりあえず自己紹介をすればいいのかと思って、真似をして、自己紹介をすることにした。


「……わ…たしは碧びら学園2年の桜木 茉耶奈です……よろしくお願いしましゅ……」


茉耶奈は恥ずかし過ぎて部活までは言えなかった。


でも彼女は、頑張っていた方だと、見ていた彼女の父 桜木 寛大 (さくらぎ かんだい)は心の中で、感心して泣いている。


彼は大学を出てすぐに企業を立ち上げ、たったの2年で有名企業へと成り上げて、一生遊んでいけるまで稼いだと言われている。


鴇蔭は彼女が所々噛んでいることを気にせずに聞くことにした。


彼は彼女のことは覚えていないいや彼女だとわかっていない。


しかし、これからのことは記憶に残るだろう。


なぜなら、彼は今日一番でやりたいことを終えれば、通常運転に戻る特質を持っている。なので、彼はクラス発表後以降の記憶は確かに持っている。


のはずだったのだが、彼女を覚えていないということはきっと、クラス発表以外に今日一番でやりたいことが変わったのか、それとも話しかけた相手ではないと判断しているのだろう。


「では!本題に入りろう」


次に仕切り始めたのは遠藤 保宗 (えんどう やすむね)だ。


彼もまた大学を出てすぐに、立ち上げた企業をたったの1年で有名企業に成り上げた優秀な人材であり、その今までの収入は一生遊んでいけるほど稼いだと言われている。


寛大と比べれば、彼よりかは優秀だと思われがちであるが、実際にはそんなに変わらない実力者同士である。


保宗はゴホンッと咳払いをしてから、本題へと入る。

鴇蔭はカッコつけなくていいから、早く本題に入れと思っている。


「私たち2つの企業の協力関係を祝って、鴇蔭と茉耶奈ちゃんの結婚をお祝いします」


「え?」

「んっ!?」


鴇蔭は余りにもの出来事に何が起こっているのかわかっていない。

茉耶奈は理解はしてしまっているが、いきなりの出来事に声がこれ以上出ないようだ。


しかし、これだけは2人とも思っている。

いつの間に協力関係になったのかを。


「あの父さん?今、なんて言ったんだ?」


「え?だから、2人の結婚をお祝いすると言ったんだ。これから、茉耶奈ちゃんとは夫婦になってもらう」


「は?」


保宗は早く結婚できてよかったなと思っているため、鴇蔭にはてなを浮かべて首を傾げながら言った。


それで鴇蔭の反応は正解に近いものということをわかっていたのは、寛大のみだった。


「じゃあお祝いを関して、今から予約しておいた高級レストランに行こう」


「あ…ああ」


彼もまた鴇蔭に似て、やりたいことになると周りを見なくなる特質を持っていた。


鴇蔭もまたそんな父の特質は知っていたため、ここで話すことはもう諦めていた。


そして、本人である2人は何も反論することなく、なくなく彼らについていくのであった。

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