第2話 僕が探していた答え
その本には、こう書かれていた。
『家族だから仲良くすべきだという考えは、通用しない。』
また、こんなことも書かれていた。
『人間には「みんなと仲良くしたい」という気持ちと、「人を怖い」と思う気持ちがある。しかし、これらは矛盾した気持ちだ。その矛盾を作り出しているのは、「種を守りたい本能」という、種族全体で一致団結して敵や危険と戦う行動と、「個を守りたい本能」という、自分を守るために他者と争う行動だ。
家族だからこそ、愛憎や財産分配といった利害関係が生じやすくなる。親の愛情や財産を独り占めしたい、「自分の利益、自分の身だけは守りたい」という本能も現れてくる。この矛盾こそが、人間らしい、本質的な感情だ。」』
そして、最後にこう続いていた。
『人間だからこそ、「憎しみ」の感情が自分に湧いてきたとき、自分を責めたり、その感情を抑え込んだりしないことが大切だ。もちろん、その感情に基づいてどのような行動を選ぶかには、重い責任が伴う。しかし、「思うこと」と「本当に行動すること」には、深い境界線がある。その境界線を越えるには、巡り合わせ、運、条件、状況が整わない限り、まず越えることはないので安心してほしい。
逆に「憎しみ」を認めずにいると、その感情は膨らんでいき、相手への憎しみが増し、自己嫌悪に陥る。だからこそ、「憎しみ」を認めることが、この負のサイクルを断ち切り、誤った行動を取らずに生きるための鍵となる』と書かれていた。
家族にだけイライラしてしまう理由は、実はとても人間らしい感情の表れだった。自分を守ってくれるはずの存在への期待が裏切られたとき、その失望が怒りや悲しみとなって噴き出してしまう。そして、その裏には「もっと自分を見てほしい」「助けてほしい」といった切実な願いと、「そんな弱音を吐いてはいけない」という葛藤が隠れている。
この本を通じて僕は、自分の感情を抑え込むのではなく、まずは認めることの大切さを知った。感情を否定するのではなく、受け止めることが、家族との関係を修復し、何より自分自身を救う第一歩になるのだ。
涙を流しながら本を閉じた僕は、これまでとは違う気持ちで家族に向き合うことを決意した。 感情を正直に受け入れ、行動を慎重に選びながら、少しずつ関係を築き直していこうと。そして何より、自分自身を責めすぎないことを誓った。
「家族だからこそ生まれる矛盾。でも、その矛盾を越えた先に、きっと新しい絆が待っているはずだ」と、僕は静かに心の中でつぶやいた。
家族の中の矛盾 まさか からだ @panndamann74
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます