乙女ゲー善役令嬢(TS済)です。

ミTerら使

第1話 悪役令嬢に転生した

 わたくし…いや、俺は装飾でコテコテな化粧台の前にいる。正確に言えばこれまたコテコテな椅子に座り、今まで無かった長い髪を自分の指に巻いたりして弄りながら。


 化粧台の鏡に映り込んでいるのは、鏡に収まりきらないほど長いストレートの白髪と琥珀色の瞳、整った顔。

 髪を弄ぶ指には温かさはなく雪のように白い。


 うん、貴族…というか“悪役令嬢”に相応しい容姿だな。冷酷そう。


 目の前にある鏡が自分の姿を映すのは当然だろう。つまりはは自分の姿である。

 うん……俺は男だったよな?うんうん…それが朝起きたら、乙女ゲー『薔薇と運命の舞踏会』の悪役令嬢の姿になっていると………


 TS+乙女ゲー+悪役令嬢の転生かよ。まあまあ癖つえーか?

というかこの乙女ゲー、セールだったから買ってたけどのめり込んむほどじゃなかったんだが?

 なんでこの乙女ゲーに転生した?

 現にこの悪役令嬢の名前も思い出せないし、なんだったか……確か───


 うッッッ痛!?頭がッなんなんだよ!?


 彼女としての今までの人生、16年間の記憶が頭の中に流れ込んでくる。前世の記憶と混ざり合い混濁し、常識の差に気持ち悪くなっているとだんだん落ち着いてきた。




「ぐっっ……、痛いわね。でも思い出したわ、カタリアーナとしての人生」


 カタリアーナ・フォン・フィンスターツヴァイク これが私の名前だ。長過ぎる、だが俺の中の中学生が疼く。

 ゲームでもそんな名前だった気がする。これで少なくとも乙女ゲーに登場した悪役令嬢と今の体は、名前と容姿が一致している。


 これは乙女ゲーに転生したと言ってもいいだろう、たぶん。よりにもよって破滅する悪役令嬢かよ、死にたくねぇよ!


 ……まあ、状況の整理から行こう。

 ゲームの設定は確か……


 舞台は剣と魔法、貴族制度が存在する王国、「アーリングセイン王国」。この国の王立学院に入学した主人公(プレイヤー)は、様々な貴族の子息たちと出会い、深い絆を育むことになります。

 学院内では権力争いや秘密が渦巻いており、恋愛だけでなく政治的な駆け引きも重要な要素となっています──って言うのが『薔薇と運命の舞踏会』、通称『薔薇園』と言われる乙女ゲーの製品説明だったはず。


 そしてカテリアーナは、アーリングセイン王国王太子のヒルグレン・アーリングセインの婚約者で、平民である主人公を持ち前の選民思想で見下す。

 そして王太子に婚約破棄されたり、いじめがバレて断罪されたりすると。


 ちなみに王太子が攻略されていなくても、主人公と他の攻略対象の愛を育む踏み台とされるためどのルートでも破滅する。ハァ?


 主人公がなぜ王立学院に入れたかというとなんか聖女でなんか凄いからなんか凄い人が無理矢理ぶちこんだとかだった気がする。


 前述の通りカテリアーナは悪役令嬢なので例に漏れず断罪、破滅の道がご丁寧に用意されている。

 ざまぁ展開は当事者になるとたまったもんじゃないな。


 ルートは確か三つ。

 すべて主人公に嫌がらせやら殺害しようとしたことが原因なのだが、罪人になり処刑され死ぬか、奴隷に落ちて過労で死ぬか、お家取り潰しからの野盗に襲われて死ぬか、だった。

 ルートによってセリフが少し変わったりもした気がするが基本どれもこの筋書きで死ぬ。死因はどうでもいいのかモブのセリフぐらいしか情報源がない。


 というか主人公にちょっかいをかけているのが原因なのだから大人しくしていれば、断罪とか破滅の道に突っ込まなくて済むはず。


 ……結構余裕、楽勝では?


 カテリアーナ自身は、ゲーム内で語られることが多くなかったが今は本人になってる上、記憶も持っている。

 ということでコイツを取り巻く環境でもまとめよう。


 王太子とは戦略結婚と言うやつで、カテリアーナは遠く離れたシュザール帝国の公爵令嬢としてアーリングセイン王国から資源を得るために結婚したらしい。恋愛的な感情は一切ない。

 帝国は王立学院設立の背景に居る最大の支援国でもあるため国が持つ学院への影響力は大きい。それで私は王子と仲良しこよしするため学院にねじ込まれたと……


 ……婚約破棄されてぇな。カテリアーナの想い人だった訳でもなく、現在カテリアーナの体を乗っ取った形になる俺もイケメンには興味ない上、死亡リスクすらある。

 婚約破棄がめちゃくちゃ早くに起きればすべての元凶こと主人公との接点が最小限になるしな。


 死の回避は絶対として、余裕があるならいずれは婚約破棄を受けるか私から突き付けて独身を謳歌したいところだ。

 まあ、政治的なしがらみで無理そうな話なのですが。


 それからカテリアーナは今年で16歳になる、王立学院の入学も基本的に16歳からだ。ゲーム本編が開始直前ということ。目の前には入学許可証もある、つまりは逃げられない。いや、逃げようと思えば出来ないこともないけれど後々の社交界とかで何かと噂されそうだ。

 そもそも国が王国の資源目当てに私をアイツと結婚させようとしているんだから逃げようものなら国からぶっ殺されるかもしれない。


 ………なんかもう考えるの面倒になってきたな。


 転生前からどうなるか分からない未来のことを考えて行動するのはあんまり得意ではなかった。

 人間そんなもんでしょ?


 まあ、最終目標はゲームのエンディングを死なずに越えると言うことで。

 そのために俺は主人公と極限まで接触を避けて前世地球人ということに威信をかけ、いい倫理観でいい子ちゃんな善役令嬢を演じるってことで。


 以上!もうめんどくさい!

 いちいちこんなのこと考えなくても地球人さまの倫理観と原作とかの知識で無双しちゃって破滅回避なんてよゆーよ!よゆー!


「お嬢様?起きていらっしゃいますか?」


 っと、適当なことを考えていたらドアがノックされた。記憶としては理解しているけど、異世界初めての人類との接触か……緊張してきた。

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