07-01 スカウトと土下座
「いいオトナが! 人の家のカギを勝手に開けて! 土足で入り込んで! あなたなんなんですか! 警察呼びますからね!」
正座させた窪さんの前で、目をつり上げ怒る二胡さんに、僕はもう、なにも言えなかった。
「あ、いえ、その、はい、まったく、申し訳なく……思って、おります、はい……その、すいません、あー、スカウトなので、それっぽく行った方が、いいかなと、思いまして……はい……」
一方怒られてる窪さんは、それまでの訳知り顔、裏の世界に通じた危険なオトナ、って顔が消え……なんだか、百パーセント自分が悪い失敗をして店長に怒られてるバイトの学生、みたいな顔をしてた。
「それっぽっくってなんですか意味わかんない! いいからさっさと靴を脱いでください!」
「……あ、はい、今、すぐ……あ、あの、ほんと、すいませんでした……」
「太陽さんが、毎日毎日、ちゃんと掃除してくれてるのに! そこを土足で……信じられない! あなた本当になんなんですか! 太陽さん、早く警察呼んでください!」
「あー……二胡さん、この人は、いいんだ。靴、脱がなくても。あと警察もいらない」
少しは彼女の信頼を勝ち取れてるみたいだ、と思いつつも、僕は答え、窪さんが正座してる膝、腿の辺りを指さした。
「……はあ?」
最初二胡さんは何を言われてるのかわからないようだったけど……やがて、気付いた。
窪さんは、一切、床に接触してない。
その体は数センチ、浮いてる。
「
僕が言うと、窪さんは少し気まずそうな顔になりながらも頷いた。二胡さんはどうやら、プロ異能にはあまり詳しくないようだ。ハチは常に浮いてる、ってのは異能ファンにとって常識なんだけど。とはいえ……。
「鍵を勝手に開けたのは……まあその……弁護のしようがないですけど……」
「いやそれについては……まったく……」
窪さんは大きく息をつき、そして。
「すいませんしたッッ!」
ごちん。
音がなるほど頭を床にこすりつけ、綺麗に土下座。
その最中も下半身は少し浮いたままだったけど……ぐりぐりと額を床にこすりつけてる。
「で……その…………スカウトのお話、させて、いただいても……?」
数十秒後、恐る恐る顔を上げ、二胡さんを見る。
二胡さんは一絵さんを見て、一絵さんは僕を見て……。
僕は肩をすくめ言うしかなかった。
「……ま、まぁ……とりあえず、普通に座りません?」
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