第60話

そんな時、幼なじみが「平和な世界を望んでいる。」と言っていたことを思い出した。幼なじみは、傑は俺以上に苦しい思いをしている奴だった。俺のせいで、もっと辛い思いをするわけにはいかない。万が一、高校が同じになったとしても、もう関わらないようにしよう。そう決めた。けれど、心の中では、どこか傑に会いたいと思っている自分がいて。いつの日か行ってみたいと言った桜川高等学園に受かるよう、懸命に勉強した。

 真っ暗な世界で、何も分からなかったある日、田島さんがやって来た。俺が中学三年で、田島さんはまだ高校三年生だった。淡々と仕事をこなし、必要以上に干渉しないスタイルを貫く彼女だけが、ひそかな心の拠り所だった。田島さんは頼めば勉強も教えてくれた。自分の大学受験もあっただろうに、俺に静かに付き添ってくれた。

 親父より母さんより、田島さんは信頼できる人だった。

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