私らしさ、そして自分らしさ
田土マア
私らしさ、そして自分らしさ
「あなたは
今学期でこの中学校を去るALTのダニエルにそうスピーチをされたことがあった。もちろん日本語ではなく、英語だったんだけど。
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小学校から中学校へと昇進した史也は、このアイデンティティーに悩む日が来る。父親の転勤の関係で知り合いなんてほとんどいない所に住むことになった史也は生活に馴染もうと必死だった。
よくもわからない言葉を使ってみたりと様々な方法を試した。その結果少しばかりかクラスの人気者にはなれた。史也自身も嬉しかったと思う。
自分を隠して生きていくことに史也は決めた。そうでないともう自分は人気者になれないと思ったから。
学校から帰ってくると史也は疲れ果ててベッドに横になる。天井を見上げているとふと史也は涙を流した。
「どうして僕はこんなに自分を隠してまで人気者になってるんだろう。」
ふと頭をよぎった気持ちを抑え込んだ。
「ダメだ。僕はみんなの人気者だから。」
抑圧された気持ちに理由をつけると史也は眠りについた。
「君たちはこれから様々な葛藤を抱くでしょう。自分を見失わないでください。」
その一言だけが頭をグルグルと回っていた。葛藤はあるにせよ、自分を見失わない…?スピーチを聞いて、なんか変なの。程度に考えていた。
–
小学校からうるさかった俺は中学校に行っても自分らしく生きていた。うるさい。と何度言われようが、俺は変わることはなかった。
そんな俺が中2になって恋をした。美咲という同じクラスになった女の子に。
美咲は顔が可愛いのにかっこよさが溢れている。ギャップとやらに推されたんだと思う。
俺がトイレから出ようとした時、廊下を歩いていた美咲と隣にいた友達が何か話していた。
「美咲ってさ、高徳くんのことどう思ってる?」
お!?これは俺をどう思っているか知れる絶好のチャンス!!
「高徳くんかぁ。うるさい。かなぁ。」
たったそれだけだった。
俺はショックを受けてトイレを後にした。
それから俺は美咲に少しでも好意を抱いてもらうためにうるさくするのをやめた。うるさい奴が急に静かになると周りは驚くらしく、いつも騒がしくする友達も俺の周りから消えていった。
俺は少しでも好かれたいだけだったのに。
「そのために自分探しをしてください。今はわからなくても、後々わかるようになります。」
自分のことなんて自分が一番知ってるに決まってるじゃんか。自分はここにいるのに自分探しをしろ。だなんてとんだ矛盾だな。程度に思っていた。
–
毎日習い事に塾、当然学校の成績は常にトップ。テストは1点すら落としたことがなかった。
そんな時、私はテレビで思い切り主張する少年をみた。
「人生は一度きりだ!生きたいように生きたらいいんだ。だからな!お前ら死んじゃだめだ!!」
その主張を目にした親はすぐにチャンネルを変えた、CMも入らない健全なチャンネルに。
たまたま、習い事がしたくなくなっていた私は何故、誰の為に習い事をしているんだろう。とふと思った。ピアノに英会話、珠算。日常的に使えそうなものもあった。
でも大抵は基礎教養で、これから先生きていれば無理にでも詰め込まれる知識ばかりだった。
それから少しだけ生きることに手を抜いた。
次のテストは平均点が89点くらいまで落ちて、親は私を叱咤した。
「これじゃあ周りにいい顔もできないじゃないか」
今まで頑張ってきたのも、全て親に認めてもらうためだった。自分は自分の為に頑張っているのではなかった。
今までの私は何だったのだろう。
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