3話 探索、そして


 二個目のレーションも完食して腹一杯になった後、行動を開始する。なにが起きているのかを確かめる為にも行動あるのみだろう。



(残りのレーションは持っていくとして、コレはどうするかな……。やっぱり持っていく方がいいよな?)



 守衛室のロッカー内にあったバックパックにレーションを詰め込んで背負い、チラリと手に持った短機関銃を見る。


 拳銃のほうは腰のホルスターに差しておいた。


(実銃なんて海外旅行の時に射撃場で一回撃ったきりだぞ? しかも、インストラクターの補助ありで。そもそもちゃんと発射できるかわからないな。流石にここでの試し撃ちはやめておいたほうがいいな)


 ボロボロで見るからに使えなさそうなのだ、この銃は。使う機会が無いのが一番なのだろうが……最悪、脅しや鈍器代わりぐらいにはなるので持っておこう。



(それじゃ、エレベーターは……駄目。スイッチを押しても反応無し。仕方ない、階段で地上一階まで上がるか)


 電気が通っていないのか、エレベーターはうんともすんともいわない。完全に停止しているようだ。


 動かないエレベーターに見切りをつけ、ずっしりとした重さのバックパックを背に担ぎ、短機関銃片手に階段まで移動する。


 守衛室のロッカーから拝借した編み上げブーツの硬い靴底が通路の床を打ち、ゴツゴツと規則正しい音を響かせる。



 そして――階段の前に移動した俺は目の前の光景を見て唖然とする。



 地下四階に上がる為の階段は崩れ落ちた大量の瓦礫に覆われ、一目で通行不能なのが見てとれる。


 そしてここは最下層の地下五階――ということは、閉じ込められたって事だ! 冗談ではない!


 こんな所で餓死……。このまま俺もあの白骨死体達の仲間入りになってしまうのだろうか。



「――そうだ、エレベーター! 動かなくても天井をこじ開けてケーブルを伝いながらよじ登れば!」



 一旦エレベーター前まで戻り、二つある内の右側のエレベーターのドアの隙間に手をかけて力任せにこじ開けようとした。


 だが――ほんの数センチ開いただけのドアはそこからはピクリとも動かない。


 なんとか開いた数センチの隙間に顔を近づけ、中の様子を窺ってみる。


 階段と同じくエレベーター内には瓦礫が積み重なり、人が入れる隙間など無かった。


 この分では左側のエレベーター内も瓦礫の山で塞がってるだろうな。



(マジかぁー……どうすんだよこれ? 本当に餓死ルートかぁ、これは。せっかく病気も直って? しかも若返ったってのにツイてないなぁ)



 ここから出るのを諦めかけた時だった。突然、左側のエレベーターのドアが開く。



(まさか……停電から復旧したのか⁉ よしっ、こっちは無事のようだ、エレベーターが動いている今の内に地上に移動だ!)



「地上一階のボタンを押して…………って、無い! 上の階のボタンが無い!! あるのは地下五階から十階までって……この階が最下層じゃないのか⁉」



「ドアが閉まります――――地下六階です――――地下七階です――――」



 俺がエレベーターの中で声を張り上げて動揺していると、操作をしていないのにも関わらず突如エレベーターのドアが閉まり、中に俺を乗せたまま下の階に降りていく。


「――ちょっ、待て待て! なんだ、このモンスターパニックものの映画みたいな展開は!! ここは豪華客船の中かよぉ⁉――っこの! 止まれっての!」



「――――地下八階です――――地下九階に到着しました。ドアが開きます、足元にご注意ください――――」



 こちらの操作を全く受け付けずに勝手に動いたと思ったら地下九階に到着してしまった。


 当のエレベーターはまた停電したのか、ドアが開いた後は何の反応も示さず物言わぬ箱と化していた。



(……ったく、次から次へと。冷凍睡眠で目覚めたら病気が治って若返って? 白骨死体と一緒に地下五階に生き埋め状態か? そして、何故か存在する地下九階にエレベーターで強制移動ってか? お次はなんだ?)



 内心でボヤきながら開きっぱなしのエレベーター内から出て地下九階と思わしき場所に足を踏み入れる覚悟をする。



(くそっ、こうなりゃヤケだな。化け物でもなんでも出てこい、コイツで返り討ちにしてやる!)



 そんな捨て鉢な気持ちで使えるかどうかも分からない短機関銃を両手でしっかりと持ち、前に構えつつ慎重に九階の部屋の中を進んでいく。


 ――そう、部屋だ。


 だが、地下五階と同じ間取りだと思っていた俺の考えは裏切られることになる。


 エレベーターの先は学校の体育館程の広さの部屋があり、化け物や幽霊の類いの姿は見当たらない。


 ただ――その部屋の中央。そこには俺の入っていた冷凍睡眠装置とはまた違う種類の金属製のカプセルがポツンと置かれていた。



 前面がガラス張りのカプセル。



 そのカプセルの中を恐る恐る覗き込んでみる。すると、そこには人間の女性が目を閉じて静かに横たわっていたのだった。




 

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