1話 目覚め
「――電力供給低下――――各種ナノマシン――適合率――百パーセント――修復完了――解凍実行――――」
殺風景な部屋の中を非常灯の心許ない光が照らす。
その部屋の中央には、人が入るにはいささか大きいサイズの棺桶の様なものが鎮座していた。
「解凍を実行中――――対象の覚醒反応を検知――開放――」
そして、その中に人――若い男が横たわっていた。
断続的に機械音声が部屋の中に響き渡る。それは棺桶ではなくナニかの装置のようであった。
やがてその機械音声に導かれる様に、中で眠っていた若い男はその両目をゆっくりと開く。
◇
「対象の覚醒を確認――バイタル正常――オーダーコンプリート――――――連動して――――」
「うっ――うえぇっ! げほっ、げっほ! うぅ、ごこはっ――――」
気持ち悪い……あ~…………多少はマシになってきたか……。あー……俺はなにして……。
(あぁ、冷凍睡眠装置――そうか、俺は――もう一週間たった?―――いや、なんでこんな暗いんだ? それに妙だな、誰も居ない)
「あの……すいません、誰か居ませんか?……あのぅ、目ぇ覚めたんですけど」
自分のかすれた声が部屋の中に空しく響き渡る。
静かだ。いつの間にか冷凍睡眠装置から聞こえていた機械音声は止まっていた。
(普通、こういうのって誰かしら常駐してるもんなんじゃないのか? 病院のICUまでとはいかなくとも、定期的に様子を見に来ても良いだろうに。それに、なんでこんなに暗いんだよ? 停電か?)
どうやら俺が入っていた装置は電源がオフになってしまっているようだ。
待てど暮らせど誰も来ない、とりあえず装置から出てみることにする。少しだけ開け放たれたドア?――を上に押し上げる。
(ふむ……? 体中に付けてた電極パッドと点滴の管が無い……)
腑に落ちないが、まずは体を起こしてドアを開け、冷凍睡眠装置から出る。
しかし、心臓の事もあって体調が心配だが……ん、おかしい……特に体に違和感が無い……?
「あ?……体が軽い? 息苦しくて胸がずっと締めつけられるような感覚が……全くない⁉」
いつ以来だろうか、ここまで楽に深呼吸が出来るのは。
体の調子が良いのは喜ばしいことなんだろうが、なんだか素直に喜べない。
これは異常だ。そう、異常が無いのが異常。まだ一週間しか経ってないわけだろう?
そもそも事前に聞かされていた冷凍睡眠は問題の先送りだ。冷凍睡眠中に並行して治療します――なんていう説明は全く無かった。
(とりあえず誰か人が居ないか探しに――の前に部屋の中を見てみるか)
と考えてはみたものの、部屋の中には自分が入っていた冷凍睡眠装置と近くにある医療機器ぐらいしか見当たらない。
他には何も――あぁ、備え付けの洗面台があるようだ。
(電気と……あ~、水道もダメか。これはもしや……とうとう首都直下地震がきたか? そろそろくるぞと言われ続けてたし。はぁっ……やっぱ外に―――)
その時、なんとはなしに洗面台の鏡に目をやる。当然見なれた顔がそこにある、筈だった。
だがそこに映っていたのは若々しい男の顔。
しかもどこかで見た事のある……これはそうだ、二十年以上前の自分によく似た顔。
「なっ……なんじゃこりゃぁ!!」
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