誰がVtuber(彼女)を殺したか?

@codequx

第1話 Vの消失

 夜の闇が降りると、俺はイヤホンを装着し、モニターの明かりだけが照らす部屋で息を潜める。

 いつものように彼女の配信を待っていた。

「みんなー、こんばんはー! 今日も遊びに来てくれてありがとうっ!」

 俺の心臓が跳ねる。

 それは、毎晩楽しみにしていた彼女の声——Vtuber『ミラ・ルミナ』の元気な挨拶だった。

 画面の向こう側では、銀髪ツインテールの少女がにこやかに手を振っている。

「今日はちょっと特別な話をするね。みんな、最後まで聞いてくれるかな?」

 特別な話?

 胸騒ぎを覚えながら、俺はコメント欄を眺める。視聴者たちもざわついている。

 ——だが、その配信は唐突に途切れた。

 画面がノイズ混じりの黒へと沈む。

 俺は息を呑み、更新ボタンを押す。しかし、チャンネルは消えていた。

 

 /


 翌朝、教室に足を踏み入れた瞬間、異様な空気に気づいた。

 クラスメイトたちはざわざわと騒ぎ、スマホの画面を覗き込んでいる。

「なあ、桐生……これ、マジかよ?」

 隣の席の親友、如月瑠璃が震える声で画面を見せてきた。

 そこにはニュース速報が表示されていた。

 

 ——『高校生Vtuber「ミラ・ルミナ」こと、氷室沙耶さんが自宅で死亡』

 

 俺の思考が止まる。

 ……氷室沙耶?

 あの、クラスで誰とも親しく話さず、無表情で本ばかり読んでいた少女が、あのミラ・ルミナだったのか?

 信じられない。いや、それどころか——

 昨日、彼女は配信していたのだ。しかも、俺の目の前で。


 

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