2人でチョコレートを
金星タヌキ
part Kon 2/11 am 10:32
「あー だからっ もっと もっと ゆっくりだってばっ」
「えーっ 時間掛かって面倒くさいじゃん。こんな感じじゃダメなの?」
「ダメだってッ ゆっくり溶かさないと 舌触り悪くなっちゃうじゃんかっ」
亜樹の監督の下 下宿の狭いキッチンでバレンタイン用の手作りチョコを作成中。
お互い高校卒業した後も 亜樹との恋愛は継続中。
去年 大学1年生の10月から 2人でアパート借りて 同棲も始めた。
基本的に仲良くやってるんだけど……。
……ただ な。
亜樹は…な。
拘りポイントについては ホントうるさいからな。
あたしが配る分と亜樹が配る分 全部で40個近く作らなきゃいけないのに そんなバカ丁寧にやってたら 休み全部潰れちゃうじゃん。
他にも色々やることあるし 夕方からはバイトのシフトも入ってるのに。
ボールに入った 湯煎して溶かし中のチョコレートを泡立て器で ガーッと混ぜるてるんだけど もっと丁寧にやれって さっきから 亜樹がイライラした感じで 口出ししてくる。
「あーっ そんなに勢いつけて 混ぜたら 飛び散っちゃうってばっ! 台所中 チョコの匂い着いちゃうし 掃除も大変だからっ ヤメテッ。ダメだってっ!」
興奮した感じの亜樹が 直ぐ傍にやってくる。
ちょっとビックリして 泡立て器 持った手が滑る。
ピチャッ
飛び跳ねたチョコの滴が 亜樹の頬に垂れる。
「熱っ」
「あっ ゴメンッ」
すぐさま謝るけど 亜樹は カワイイ顔を歪めて憮然とした表情。
相変わらず絶世の美少女。
……いや。
もう 亜樹も19歳になったし 美少女ってゆーより美女の方が いいのかもだけど……でも やっぱ美少女っぽい外見。
高校時代は ツインテールがトレードマークだったけど 大学生になってからは 後ろで1つ括りにしてることが多い……今日も そう。
デートの時はスカート姿が多いけど 普段はジーンズにフード付きトレーナー。
家では コンタクトせずに眼鏡姿がデフォルト。
まあ 性格は 基本 男らしくて カッコいいし 優しいし 頼りになる感じ。
そこら辺は 出逢った頃と変わらないちゃー変わらない。
あたしの愛してやまない王子様。
ただまあ 一緒に長く過ごしてるから お互い遠慮が無くなってる部分もあって ケンカすると 言い過ぎちゃうことも 増えてきた……。
できることなら ケンカは回避したい。
……特に今回は 亜樹の忠告を聞かなかった あたしが悪い気がするし。
直ぐ謝ったけど まだ 亜樹は怒った顔。
かなりマズい。
あたしの性格を考えると 亜樹がなんか言ってきたら たぶん言い返す。
で 仲直りするまで 1日~2日かかる。
面倒臭過ぎる事態の 秒読みが始まってる感じ。
なんとかしなきゃ。
って思った瞬間 ピンとくる。
これなら 亜樹も許してくれるかも。
前に『恋に胸キュン』の描き下ろしイラストで見たヤツ。
「熱かった? ゴメンね…」
って言いながら 亜樹の頬っぺたに着いちゃったチョコを 舌と唇で取ってあげる。
要するに ほっぺにキス。
ゴメンねの気持ちと ミスをウヤムヤにしようって思惑を込めた 魅惑のキス。
どーよ?
亜樹は ビックリした表情だけど まだ 目に怒りが残ってる。
もうひと押し。
「ゴメン。怒ってる? 仕返しして いいよ?」
「……仕返し?」
「そう 仕返し」
そう言いながら 泡立て器についたチョコを あたしの頬につけてみせる。
「ねぇ 仕返しして?」
ニッコリ微笑んで キスのおねだり。
亜樹は 一瞬 息を呑んだあと カワイイ顔を近づけてくる。
「……ん」
亜樹の柔らかい唇が あたしの頬に触れる。
作戦成功!
甘くて熱いキスタイムの始まりだ……。
………。
……。
…。
十数分後。
「これ どーするんだよっ? 指とかで触っちゃったから このボールに入ってるチョコ 全部 ボク達で食べなきゃなんないだろっ!」
「食べれば いいんでしょ! 食べればっ! そんなことゆーけど 亜樹だって ノリノリで あたしの ほっぺや 唇にチョコ塗ってきてたじゃん!」
「それは そもそも 瞳が……」
「一緒になって やってたんだから 同罪よっ。同罪っ!」
お互い怒鳴り合いしながら 台所の片付け中。
まあ イチャイチャし合った後だから なんとなく許し合える雰囲気。
材料とか全部 ご自宅用になったし かなり面倒なことになっちゃったけど。
でも 1年後には 笑い話になってる感じ。
大丈夫 大丈夫……だよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます