第11話 いやいや…



 朝。


 目が覚めても、胸のドキドキはまだ残ってた。

 昨日のことがずっと頭から離れない。

 理玖君の「良かったわ」の声。

 それから――お隣だったって事実。


 なんなの、あの展開。

 私、夢でも見てたのかな……。

 どうしても信じられない拭いきれない気持ち。


 寝ぼけた頭で制服に着替えて、玄関のドアを開けた瞬間。


 「……遅い」


 ――え?


 目の前に、制服姿の男の子が立っていた。


 「……理玖君!?」


 まじで目が覚めた。

 そこには、壁にもたれながらスマホをいじってる理玖君の姿。

 無表情っぽく見えるけど、耳がほんのり赤いの、私は見逃さなかった。


 「え、な、なんでいるの!?」


 驚きすぎて、声が裏返る。


 「は? 隣に住んでんだから、別にいいだろ」


 そりゃ、そうだけど!!

 いや、でもそれだけじゃなくない!?!?


 「一緒に行くの、ダメだったか?」


 ……その一言。

 ずるいでしょ。ほんとにもう、理玖君ってば。ドキドキしっぱなしの私の気持ちも考えてよ…。


 「ダ、ダメじゃないけど……」


 視線をそらして、口ごもる私。

 自分でも顔が熱いのがわかる。

 ちゃんと化粧してくればよかった……なんて、ちょっと思った。


 「ほら、行くぞ」


 理玖君が先に歩き出す。

 私も少し遅れて、その後ろを追いかけるように並んだ。


 登校の道。

 前の学校では、ずっと一人で歩いてた。人が怖かったし。

 でも今は、隣に誰かがいる。


 朝の風がやさしく吹いて、制服の袖が理玖君のとすこしだけ重なった。


 「……変な顔すんな。笑ってた方が、いい」


 ふいに、理玖君がそんなことを呟いた。


 ――え?


 今の、なに。

 ドキドキが、止まらないんだけど……。


「早く歩けよ。置いてくぞ。」


 そんなことを言われ、我に帰った。そして小走りで歩き出した。

 登校時間がやけに短い。


「この時間、ずっと続けばいいのに…。」

なんて

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