#2 ハロー、バニラ

 駅までの道。ふと香るバニラの匂いに足が止まった。


「これ、あの子の香水と同じだ」

 彼女は苦笑する。

 あれから一年、まだこんな風に思い出してしまう。



「好きだよ」

 そう伝えたあの日、あの子は微笑んで、でも何も言わずに去っていってしまった。

 後悔しても遅い。再び歩き出す。



 すれ違う誰かが同じ香りを纏っていた。

 ハッとして振り向くと、あの子がいた。


「久しぶり」


 バニラの香りが、春の風に溶けていった。

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