第9話 支配の終焉
フィオラとカイルは、新しい星の中心に立ち、目の前に広がる光景を見つめていた。星喰いとの対話を終えた後、二人は過去の影を受け入れ、未来への道を切り開く準備を整えていた。しかし、その過程で、二人は気づかずにひとつの深い問いを抱えていた。それは、彼らが生きる世界における「支配」の問題だった。
「私たちが新しい星を創り出したことで、この世界は変わるはずだわ。でも、どうしても『支配』という概念が、どこかに残っている気がする。」フィオラは、無意識のうちにそう呟いていた。
「支配か…。」カイルはその言葉に深く考え込んだ。これまでの彼らの旅路の中で、さまざまな敵との戦いや試練を通じて、支配の力が常に何かを変えようとしていた。しかし、今、彼らが築こうとしている新しい世界には、そのような力が必要なのだろうか?
「私たちが本当に求めているのは、支配のない場所だと思う。誰かが支配することなく、皆が共存できる場所。」フィオラは静かに言葉を続けた。「でも、それを実現するには、私たち自身もその概念を手放さなければならない。」
カイルはフィオラの言葉を受け入れ、深く息を吐いた。支配という概念は、力を持つ者がその力を行使し、他者を制御するという考え方だ。しかし、そのような力が必要なくなる世界があれば、どんなに素晴らしいことだろうか。
二人は一緒に手を取り、周囲に広がる新しい星々を見渡した。その光景はまるで、無限の可能性が広がる空間そのものだった。だが、彼らが感じるものは、その光景の美しさだけではなかった。新しい星々は、無限に広がり、だれもがそれにアクセスできる場所として、誰か一人に支配されることなく共存するべき場所であると感じた。
「この星々が、誰のものでもない場所になれば、私たちはようやく本当の意味で『共存』できる。」フィオラは言った。
カイルはその考えに賛同し、目を閉じて静かに思索を巡らせた。支配の概念を放棄すること、それは単なる理想論に過ぎないのだろうか? それとも、実際に可能なことなのだろうか?
その時、二人の前に突然、存在しないはずの影が現れた。それはまるで、かつての戦いの中で彼らを追い詰めてきた者のような、暗闇の中から浮かび上がる形だった。影の存在は、冷徹で無慈悲であり、支配の力を象徴するようなものだった。
「あなたたちが手に入れたもの、それは一時的な平和に過ぎない。」影の声が響いた。「真の力こそが、秩序を保ち、世界を支配するのだ。」
フィオラとカイルは、その言葉に動揺することなく立ち向かった。かつての彼らであれば、こんな存在に恐れを抱き、反撃を考えたかもしれない。しかし、今の二人にはそのような思いはなかった。
「支配こそが、無力を生むものだと、私たちは知っている。」フィオラは力強く言った。「誰かが支配し、誰かが従うという関係ではなく、すべての存在が等しく尊重され、共に生きる場所を作り上げることこそが、真の力だと信じている。」
影は一瞬、沈黙した。その後、無理に笑ったような音が響き、影の形が歪み始めた。「それが…お前たちの求めるものなのか?」影の声は不安定になり、揺れ動いた。「だが、世界は秩序を必要としている。お前たちが築こうとしているものは、混沌を生むだけだ!」
「秩序がなくても共存できる世界があると信じている。」カイルが続けた。「私たちが目指すのは、ただの平和ではない。誰もが自由に、そして互いを尊重しながら生きることのできる場所だ。」
影はその言葉に耐えられなくなったかのように、ひときわ大きな音を立てて崩れ始めた。やがてその姿は完全に消え失せ、ただ静寂が広がった。フィオラとカイルは、すべての闇が消え去ったことを確認し、互いに目を合わせて頷き合った。
「支配の終焉が訪れたわね。」フィオラは柔らかい笑顔を浮かべた。
「うん、ついに。」カイルも笑顔を見せた。
彼らの前に広がる新しい星々は、もはや誰かのものでもなく、すべての命が共存する場所として、次第にその光を強めていった。支配を放棄したことで、二人は初めて、真の自由を手に入れたのであった。
新しい星々は、無限に広がる可能性の象徴として、彼らに希望と共に未来を語りかけていた。そして、二人はその光の中で、真の共存がもたらす平和の意味を、深く理解していた。
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