第7話 緑が生まれる

燃え尽きた星の灰の中に、新たな光が芽生え始めていた。それはまるで、生命の萌芽を象徴するかのような、小さな緑色の光だった。フィオラとカイルはその光を見つめ、静かに息を飲んだ。


「これは……私たちが創ったもの?」フィオラが小声で問いかける。エリスがそっと頷き、その光に向かって手を伸ばした。緑の光はふわりと空中に浮かび、やがて地表に降り注ぐ。そこには、小さなプランクトンのような存在が生まれ、ゆっくりと繁殖していく様子が見て取れた。


「命だ……。」カイルが感嘆の声を漏らす。その目には深い喜びと、どこか緊張したような光が宿っていた。


小さな生命の芽生え


フィオラたちは星の表面を見つめながら、生命がゆっくりと増えていくのを観察した。小さなプランクトンたちは、緑色の海の中で少しずつ広がり、互いに交わりながら新しい形態へと進化していった。その過程を見守る四人の表情には、それぞれ異なる感情が浮かんでいた。


「これが生命の第一歩だとしたら、この星にどんな未来が待っているのかしら。」エリスの柔らかな声には期待と不安が入り混じっている。レオンは腕を組み、険しい顔つきで言った。「未来を語るにはまだ早い。この小さな命が果たして生き延びられるのかどうか、それを確かめる必要がある。」


カイルはレオンの言葉に頷きながらも、こう言った。「でも、これが初めてだ。支配や恐怖からではなく、共に創り上げた結果として何かが生まれた。これを守り、育てるのが僕たちの使命だ。」


フィオラもその意見に賛同するように微笑み、エリスの手をそっと握った。「この生命がどう育つのか、一緒に見届けましょう。」


星喰いとの対峙


しかし、その喜びは長くは続かなかった。生命の誕生を祝うような光景の中に、突然不穏な気配が漂い始めた。空気が歪み、闇の中から再び星喰いが姿を現したのだ。


「また来たか……!」レオンが咄嗟に構えを取るが、フィオラが静かに手をかざしてそれを制した。「待って。今回は戦わなくてもいいかもしれない。」


エリスが星喰いに向き直り、優しく問いかけた。「なぜ、あなたたちは現れるの?私たちを妨害するため?」


星喰いは答えない。ただ、その存在自体が四人の心に響くような感覚を与える。彼らは直感的に理解した。星喰いの出現は、彼ら自身の不安や葛藤の反映だということを。


対話を試みる


「星喰いは私たちの鏡……。」カイルがつぶやき、星喰いに歩み寄った。彼はその巨大な影に向かって、自らの心の中にある恐れや疑念を語り始めた。「僕たちは、この星に命を与えたけど、正しいことをしているのかどうか、本当は分からない。それが僕たちの中に星喰いを生んでいるのかもしれない。」


その言葉に、星喰いの姿が少しずつ変化し始めた。闇の輪郭が薄れ、そこに映し出されるのは、フィオラたち自身の姿だった。彼らはそれぞれの不安と向き合い、互いに言葉を交わしながらその存在を受け入れていった。


緑が星を包む


星喰いが再び姿を消した後、星には一層の静寂が訪れた。そして、地表にはさらに多くの緑が芽吹き始めた。それは、小さな命が次々と誕生していく兆しだった。


「これが赦しと受け入れの力……。」エリスが小さくつぶやき、フィオラとカイル、レオンもまた静かに頷いた。四人は再び協力し、この小さな命たちを守りながら新しい未来を築く決意を固めた。


空には新たな星が輝き始め、命の息吹が星全体を包み込んでいく。

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