第6話 四人での協力

エリスは柔らかな微笑みを浮かべながら、小さな光の粒を両手に抱え込んだ。その粒は命の源――新たな星の種であった。カイルはその隣で厳しい表情を保ちつつ、種を守るための構造を考えていた。二人の前には、エリスとカイルがそれぞれ創造したパートナー――フィオラの対となる優しさを宿した女性、エリス。そしてカイルの理知を受け継いだ男、レオンが立っていた。


四人は、小さな星を生み出す作業に取り掛かっていた。最初は小さな星で実験を重ねていたため、失敗しても大きな問題ではなかったが、意見の違いが彼らを試練へと導いていた。


「この星には、風が必要だわ。」エリスが柔らかな声で言った。「風があることで命は呼吸し、世界は動き出す。」


「だが、風が強すぎれば荒廃を招く。」レオンが即座に反論する。「安定が最優先だ。風の力を抑えるべきだ。」


「抑えすぎれば、星に生気が宿らなくなる。」エリスが目を伏せた。「調和が必要なの。」


「では、調和の基準は誰が決める?」レオンの声には理知的な冷たさが混じっていた。「その場の感情で動けば、星そのものが崩壊するぞ。」


カイルは二人の間に入り、手を上げて止めた。「待て。二人とも、一旦落ち着け。どちらの意見も正しいが、折衷案を見つけるべきだ。」


「それは容易ではないわ。」エリスがため息をつく。「私たちは違う視点を持っている。それ自体は悪いことではないけれど…。」


その時だった。四人の間に影が差し込んだ。暗黒の霧のような存在――「星喰い」が現れたのだ。


星喰いは四人の対立が生む歪みから生まれる。漆黒の身体は星の光を飲み込み、あたり一面を灰に変えていく。彼らが作りかけていた小さな星は、星喰いの触手によって容易く崩壊した。


「やめろ!」カイルが叫び、剣を握る仕草をするが…今や彼は剣を持たない。


「待って!」フィオラが声を張り上げる。「剣ではなく、対話で解決しなければ意味がない!」


エリスは星喰いの目をじっと見つめた。「この存在…私たちの内面が生み出したものね。」


「何を言っている?」レオンが眉をひそめる。


「恐れと不安…それが具現化しているのよ。」エリスの声には確信があった。「私たちが争えば争うほど、星喰いは強くなる。」


四人は目を見合わせた。そして、それぞれの胸の内にある感情と向き合う必要性を感じた。


「私たちが作る星は完全である必要はない。」フィオラが静かに口を開いた。「完璧を目指して意見をぶつけ合えば、星喰いを生むだけよ。」


「では、不完全なままで進めるのか?」レオンは戸惑いを見せた。


「不完全であることを受け入れれば、それが新しい可能性を生む。」エリスが穏やかに微笑んだ。「私たちが調和を目指すのではなく、星そのものが調和を見つける道を開いてあげるべきなの。」


カイルは深く息を吐いた。「確かに…俺たちが星の全てを支配しようとすること自体が間違いだったのかもしれない。」


四人は意見を柔らかく交わし合いながら、小さな星を再び作り直した。星喰いは、彼らの調和の中で次第に力を失い、霧のように消えていった。


完成した星は小さかったが、穏やかに光を放っていた。その光には、四人それぞれの思いが込められていた。


「これでようやく一歩目ね。」フィオラがほほ笑んだ。


「まだまだ道のりは長いが、確実に進んでいる。」カイルが頷いた。


エリスとレオンもまた、その光景を静かに見つめていた。そして四人は、新しい星創りへの希望を胸に、次なる挑戦へと向かう準備を整えた。


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