第4話 名前を読んではいけない者たち
星の創造を進める中、フィオラとカイルは再び「名前を読んではいけない者たち」と相対することになった。彼らはもはや単なる影ではなく、より明確な姿を持ち始めていた。その姿はどこか懐かしくもあり、不安を掻き立てるものだった。
「見て、彼らの姿…私たちに似ているわ」
フィオラは声を震わせながらカイルに伝えた。確かに、その姿は過去の自分たちを映し出したかのようだった。戦場で振るった剣を握るカイル、恐怖に支配されるフィオラ。その姿は、彼らが剣を置く前の記憶そのものだった。
「どうして彼らは俺たちの姿をしているんだ?」
カイルは問いかけながらも、その答えが既に心の中にあることに気づいていた。
「きっと、私たちの心の中にまだ残っているのよ。剣を置いたけれど、本当の意味で自分を赦せていない」
フィオラはその場に膝をつき、震える手で地面に触れた。目の前の「名前を読んではいけない者たち」は、彼女たち自身の過去の恐れと罪悪感そのものだった。
その瞬間、「名前を読んではいけない者たち」の一人が口を開いた。低く、そしてどこか悲しげな声で話し始める。
「私たちは、お前たちの過去だ。置き去りにされたもの、見ないふりをしたもの。それがここにいる」
フィオラとカイルは目を見合わせた。目の前にいるのは敵ではなく、自分たちの一部だった。
「私たちが過去を拒絶する限り、彼らは消えない。だけど、どうすれば…」
フィオラの言葉に、カイルは静かに頷きながら答える。
「受け入れるんだ。過去の自分を否定するんじゃなく、抱きしめるように」
二人はゆっくりと「名前を読んではいけない者たち」に歩み寄る。その瞬間、彼らの姿はよりはっきりとし、過去の傷や後悔が鮮明に蘇る。しかし、二人は逃げなかった。
フィオラは過去の自分を見つめ、静かに語りかけた。
「あなたを否定したくて、ずっと逃げてきた。でも、それは間違いだった。あなたは私の一部…今、私はあなたを受け入れる」
カイルもまた、剣を振るっていた自分に向かい、言葉を紡いだ。
「お前がいたから、今の俺がいる。お前の苦しみも、俺が引き受ける」
その瞬間、「名前を読んではいけない者たち」の姿が徐々に薄れていく。そして、彼らは光となり、二人が創ろうとしている星の核へと溶け込んでいった。
「彼らを拒絶するのではなく、一緒に未来を創る一部にできた…」
フィオラの頬には涙が流れていたが、その顔には希望の光が差していた。
カイルは星の核を見上げながら静かに呟いた。
「これで本当に始まるんだな。過去を受け入れた俺たちの、新しい未来が」
二人は再び手を取り合い、星創りの旅を進めていく。過去の自分たちとの和解を果たした彼らには、次なる挑戦が待ち構えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます