第24話

「嘘だろ」


「嘘じゃない」


「じゃあ、冗談?」


「冗談なら、笑えないよね」





目の前で顔を青くして、私に言葉を放っている男性。


頭上に広がる夜空と同じ色をした髪に、月のように儚い美貌の持ち主。


白い肌に汗の粒を光らせ、その切れ長の瞳を大きく見開いて私を見つめてくれている。




ああ、嬉しい。


やっと、私を見てくれている。





私は幸福に浸りきった、穏やかな微笑を彼に向けた。


なのに彼は、私の笑みにますます顔を強張らせる。




解せない。


私は貴方の笑顔を見る度に嬉しくなったのに、貴方は私の笑みを見ても喜んでくれない。


感じ方が違うことは、恋人同士ではよくあることだと分かってたけど、まさかここまでとは。





彼氏は、ゆっくりゆっくり、本当に数センチずつ私に近付く。


縮まる距離に、私の胸が甘い熱を帯びた。

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