第18話
友人の言葉に、私は眉間に皺を寄せた。
「早弁?教科書立てて隠して食うの?無理っしょ。先生に見つかるって」
「……私のお父さんさ、学生の頃ずっとそうして早弁してたけど、先生に怒られなかったんだって」
「なんで?」
「見つかって叱られたら、お返しに先生の授業の疑問点や矛盾点の質問を執拗に聞いたから。それで先生嫌がって、もう早弁してもスルーしてくれたんだってさ」
「やばい、あんたのお父さん天才」
「うん、神童って呼ばれてた」
「でもさ、私、先生の授業聞いてないから、授業の疑問点や矛盾点とか分からない」
「それな」
再び訪れる沈黙。
だが何故だろう、私は一問も解けていない。
なんだろう、この複雑な数字とアルファベット……
世の中の大人はみんなこれを解いて卒業したんだね……尊敬するわ……
日本人なのになんでこんな問題出るんだろ……
足し算引き算だけでよくね……
開始して三十分、コーヒーの効き目が切れてきた時、私のスマホが鳴り始めた。
手に取り、応えると……
私の目がカッと見開いた。
そして通話を切り、ノートに「あひゃひゃ、いろはにほへと~d=(^o^)=b」と、意味不明な文章を書いていた友達に、低い声で言う。
「おい……」
「んー?」
「今友達から電話来てさ……美桜学園の不思議体験!の限定グッズ、販売中だって!今ならギリギリ間に合うって!」
「マジかよいろはにほへと!!」
「マジですちりぬるを!!」
「じゃあ今すぐ行くぜ、わかよたれそつねならむぅうううう!!」
私と親友は力強く頷くと、鞄を手に持って外に向かって走っていった。
家に残されたノートと教科書。
彼らの姿は、結局朝になるまで見なかった。
さよなら、私たちの単位……
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