第6話
その後、私は窓から飛び降り、全身打撲と、足を骨折してしまった。
病院に運ばれ、目が覚めると、そこには晃の姿が。
薬品の臭いが充満する真っ白な空間で、私は喉の痛みと全身の鈍痛に耐えながら、言葉を発した。
「……あ、……きら……」
「紅葉……っ、良かった……っ!!」
目に涙を浮かべ、綺麗な顔を歪ませる晃。
私はそんな彼に弱々しく微笑み、でもすぐにハッとした顔で、
「千枝……千枝は?!無事なの?!」
「……千枝は……助からなくて……その、消防士さんが、建物の中で見付けたそうだ……」
苦渋の表情を浮かべ、振り絞るように言った晃。
私は目を見開き、そして両手で顔を覆うと、涙を流した。
「そ、んな……千枝……どうして、飛び降りなかったの……私、私……千枝を、助けられなかった……っ」
肩を震わせて泣く私を、晃は優しく抱き締める。
「言うな……お前だけでも助かって、本当に良かった……」
「でも、でも……千枝は……」
「……千枝のことは本当に残念だ……でも、泣いたってアイツは帰ってこない……」
「……っ」
晃は私の両手を掴んで下ろし、露になった私の顔に口付けを落とした。
懐かしい柔らかな感触に、私は息を止める。
互いの唇が離れ、私と晃は熱っぽい目で見つめ合った。
「紅葉……」
「……なに?」
「千枝がいなくなって……もう俺には、お前しか残されていないんだ……」
「……」
「もう一度、俺にチャンスをくれないか……?俺、お前しか愛せない……」
「…………晃が、私でいいなら……」
─────ああ、どこまでも最低な男。
貴方から私を捨てたくせに。
貴方が全部壊したくせに。
恋人が死んだのに、もう違う女に愛を捧げるなんて。
どこまでもクズな男。
けれどそんな貴方が大好きなの。
親友を殺しちゃうぐらいに、大好きなの。
命の危険を覚悟で火の中に飛び込んで殺しちゃうぐらい、愛しているの。
ねぇ、千枝。
残念だったね。
本当にごめんね?
でも、晃が欲しいから、仕方がなかったの。
だから、せめて言わせて?
『さよなら、大嫌いな親友』
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