ゴルフってさぁ、なんで無くならないの?
素通り寺(ストーリーテラー)
ゴルフといってもドイツの名車ではなく、球打ち遊びの方のアレね。
みなさんこんにちわ。人呼んで自称(ぇ?)『ポストラノベWeb小説家』の
もうええトシしたオッサンですが、何故か半年前からゴルフ始めてしまいました。そんな私がこの風変わりなスポーツを、ちょっと語ってみたいと思いまして、筆を執った次第であります。
さて、皆様はゴルフというスポーツに、いかなる印象をお持ちでしょうか。
多分これ、ゴルフをやる人とやらない人で、完全に真っ二つに割れるのではないでしょうか。
そう、好きな人は大好きだし、逆にやった事のない人はまるで
実際、私もほんの半年前までは
私は昭和生まれですから、ゴルフをしない外野的な立場からしたら、ソレにいい印象があるはずもないんですよね。だってニュースとかドラマとか見てるとホントに嫌な話題しか無かったですから。
自然破壊、住民の立ち退き、会員権の違法売買、政治家の不正取引材料、暴力団の関与、会社の接待ゴルフ、馬鹿みたいに高額な道具一式、貧乏人は帰れなプレー料金、お金持ちしか縁がない遊び、練習場での倒壊事故、公園などで練習する危険な輩、付き合いゴルフに休日を潰された若夫婦の家庭崩壊まで。おおよそネガティブな話題には枚挙に暇がありません。
加えてあれがスポーツ? って思われている方もさぞ多いでしょう。事実私もそうでした。まぁ今ではチェスもスポーツになる時代ですからいいんですが、ゴルフはずっと昔からですからね。
野球人にとっては「止まってる球」を打つなんて馬鹿らしいでしょうし、格闘技者にとっては目の前の相手と直接戦わないのなんて遊びでしかないでしょう。陸上競技者や水泳選手にとっては、パコンと打つだけの動作であとは歩きだなんて、楽ちんにも程があるとツッコミたくなるでしょうね。
まぁそんな認識だった私なんですが、実際始めて見ると、なるほどこれは多くの人がハマるのも解るわー、と思うのですよ。
ゴルフ好きな母の誕生日を機に、たまには親孝行代わりに一緒に打ちっぱなしにでも誘おうと思って、中古のクラブを物色しにジャンク屋へ行って驚きました。
ドライバー一本が500~1000円で売られていたからです。え、こんなに安いの?って(笑)。
フルセットでも3千円
まぁ考えて見れば当然な話ではあるんですよね、ゴルフに付き合わされてクラブを揃えざるを得なかったサラリーマンさんなんかは、一番安いセットを買って体裁だけは繕っていたでしょうし、それが二度三度と中古屋と客の間を往復してれば、そりゃ値段もがた落ちするでしょうから。
あ、もちろん最新式の高級品を新品で買おうとしたらウン百万かかるのは変わりませんけどね。
で、その500円ドライバーをひっさげて近所の打ちっぱなしに出向いたんですが……全然まともに飛びませんでした。
豪快に空振りし、引っ掛けて真横に飛ばし、打ち損ねてゴロゴロと転がり、テンプラしてすぐ上の天井にぶち当て、ようやくまともに当たったと思ったら右折交差点のように豪快に右に曲がって行きました。
「あー、相変わらずつまらんわ」というのが私の印象でしたね。
実は私が20代の頃に父がゴルフを始めて、その付き合いで2~3回の打ちっぱなしと、一度だけコースに出た事があったんです。
父にしてみれば、私と趣味を共用したい意図もあったでしょう。しかし前述の通り昔の私はゴルフにいいい印象を持っていませんでした。
そしてその経験は私にゴルフ嫌いを加速させるだけのものでした。運動にはそこそこ自信のあった自分にとって、まともに当たらない打ちっぱなしはストレスを溜めるだけの物でしかなかったのです。
一時間必死にクラブを振り続けてダメショットを繰り返すうちに、周囲の目線がまるでせせら笑ってるかのように見えて来ました。当然ですよね、まだ中学生くらいの子供でも、痩せ気味のお爺さんでも私より遥かにいいナイスショットを繰り出しているんですから。
体格もあり力もあるはずの20代の私の豪快な扇風機は、さぞ周囲の笑いと優越感を買った事でしょう……もちろんその分、私は強烈な劣等感を味わったのです。
え、コース回った時はどうだったかって?
あはは、やってる人ならお察しかと思いますが、半分もいかない6~7ホールで持ち球を全部無くして、あえなくギブアップとなりました。
当然ですよね、打ちっぱなしでまともに打てない奴がどーやってコース回るんだ、と。
ただ、30年前と今では私自身も変わっています。昔は自分のやり方で上手く打てなくてムキーとなるだけでしたが、今はその原因を理論的に構築するだけの人生経験というものがあります。
どうしてうまく打てないのか、クラブがボールを飛ばす原理は? 当てる角度や振る方向は本当にこれでいいのか、真っ直ぐ飛ばんなら向きを変えてみたらどうだ? などと色々融通を効かせてみて、なんとかかんとか『前方には』飛ばせられるまでにはなりました(苦笑)。
まぁ完全な我流フォームで、普通の人が私の打ち方を見たらまず失笑するでしょうけどね。
そんなわけで母の誕生日に打ちっぱなしに出向き、少しは親孝行をすることができました。もちろん母は私などよりすっと上手く、きれいな弾道を飛んで行くその打球にはただ見とれるだけでしたけどね。これがキャリアの差か!
……母よ、ホントに80歳?(;゚Д゚)
その際に父の遺品であるゴルフセットを頂戴しました。何かと口やかましかったカミナリ親父でしたが、それでも遊びに関してはイロイロと教えてくれる、いいアウトドア親父でもありました。
そんな父が最後にハマったアウトドアスポーツ、その遺品を受け継いだのですから、少しは真剣にやってみようと思って、この半年間ちょっと頑張ってみました。
会社の近くに格安のミニコースがあり、そこなら私の貧しい懐でもなんとか回る事が出来ます、平日なら何と2千円ちょいでラウンドできるのですからね。全部パー3ですけど。
ええもちろん+30とかそんなスコアでしたよ。TVのプロゴルファーや漫画のキャラがバーディとか当たり前に取っているのは、本当にファンタジーの世界です。現実にはダブルボギーですら上出来とも思える難しさでしたから。
ティーショットで豪快にOBラインをぶち超えて(アイアンやウェッジで!?)、アプローチでホームランや弾丸ライナーを打ってグリーンを行ったり来たり、パットでカップをやっぱり行ったり来たりして、パー3で7とかを普通に叩いたりしました。
でも、そんな中でたま~に、どトップしたショットがうまく転がって1オンしたり(無論その後4パット)、アプローチでバンカーを見事に飛び越えてピンにピタリと付けたりした時は、
そして3度目のラウンドの10番ホールのティーショット、あの一打で私はゴルフの真の魅力に気付くことが出来ました。
ピッチングウェッジで高々と打ち上げ、まるで青空に溶けるように舞い上がったその白球が、ピンに向かって真っすぐに……まるで隕石のように落下して来るそのシーンは、名作映画のクライマックスのように美しく、そしてドラマチックでありました。
そしてその一打を打ち出したのは、他の誰でもない、この私自信なのです。
(ああ、これが、ゴルフ、か――)
その時私は気付きました。ゴルフって、人生の縮図なんだな、と。
人生と言うのは、挑戦と、そしてその結果である成功と失敗の連続です。
幼子の遊びも、学校での勉強も、青春の恋愛も、受験やスポーツも、就職やお仕事も、お料理や結婚や出産、ギャンブルすらも。
まずはその人自身がチャレンジして、そして時には成功し、時には失敗するのです。
成功すれば嬉しいし、逆にそれに慢心して大きな失敗をする事もあります。失敗したら悔しくて悲しいけれど、それを教訓にして次のチャレンジに生かせます。
そんな人生のチャレンジが、ゴルフの一打一打には凝縮されている気がします。
クラブを振るのはあくまでプレイヤー本人です。そしてそのチャレンジの結果が、本当にすぐに目の前に現れます。ナイスショットもバッドショトも、自らの一打の結果なのですから。
そんな人生の縮図のようなチャレンジに、1ラウンドで実に100回以上も挑戦できるのです。
美しく整備された、緑色の舞台で。
だからこそ、多くの人の心をとらえて離さないのでしょう。
ゴルフというものに、最初に語ったネガティブな部分があるのは事実です。美しいゴルフコースひとつにしても、そこに多大な環境破壊があることは否定できません。
競技そのものに排他的な印象があり、敷居の高い娯楽であるのは今も変わりません。スマホなどの通信技術が発達し、娯楽が多様化、そして安価化してきた現在なら尚更でしょう。
でも、その裏にちゃんと魅力があるのもまた事実なのです。美しいフェアウェイやグリーンはまさに『舞台』といった趣があり、抜けるような空に舞い上がった白球は、自分の痕跡を空に描くがごとくの物語を演出してくれます。
長い長いパットが吸い込まれるようにカップインするシーンや、短いアプローチがピンを捕らえてカコンとチップインするシーン……はさすがにまだ経験がありませんが(当たり前だ)、きっと最高の成功感を演出してくれることでしょう。
このエッセイを読んでくださっている方が、果たしてゴルフの経験者なのかどうかはわかりません。経験者ならもうとっくにご存知の内容ではないかと思います。
ですが、もしゴルフに無縁な方で、ここまで読んでくださった方がおられましたら、何かのきっかけでクラブを手にする機会がもしありましたら……。
是非、人生の縮図の一打を放ってみて下さい。
ゴルフってさぁ、なんで無くならないの? 素通り寺(ストーリーテラー) @4432ed
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