幕間 星は見ていた

「う、あああぁ」

瞳から、血が引いていく。

「あ、れ?」

血に濡れたパーティー会場。

「また、やってしまった」

へたり、とその場に俺はすわりこんだ。

「また、みんないなくなっちゃう」

「大丈夫だよ、魔王。俺は離れないさ、ずっと」

「お前の場合は、俺の血が目当てだろう」

「ああ、そうだ」

「否定もしないのか。まあいい」

俺は、あたりを見回した。

どうやら、本当にすべて壊してしまったようだ。

「俺のレネラはどこだ?」

「ああ、あの子ならさっき君が殺しただろう?」

「え?」

パキパキと音を立てて、手に持っていたグラスが割れた。

「俺、が?」

「うん、死体ならそこにあるよ?」

スノウが指さした先に、女の遺体があった。

俺は急いで駆け寄る。

しかし、すでに冷たくなっていた。

「レネラ……?」

「う、そだろ? なあ、嘘だよな? ねえ?」

何度も話しかけたが、返事をすることはなかった。

「ど、うして? 一体俺が何をしたっていうんだ?」

「そういう定めなんだよ。だから好きな子なんてつくらなきゃよかったのに」

「だ、だって…、レネラは、さっきまで…」

「はあぁあ、だから僕と契約しとけばよかったのに…」

呆れたような様子で冷たくスノウがこちらを見る。

なぜか、頬をしずくがつたっていた。

「これは、なんだ?」

俺は、そのしずくをどけた。

しかし、なぜかあとからあとから止まらなかった。

「もう、いい」

「何が?」

「全て、壊す。レネラのいない、この世界に意味なんて、ない」

「おお、怖い」

冷やかすようにスノウはそう言った。

しかし、そんなことはどうでもよかった。

俺は手の中に魔力の塊を作り、なげた。

一瞬にして街は焼け野原とした。

「さすが魔王。九人の魔王達とは比べ物にならないくらい強いねえ」

「九人?」

「うん、残りの一人はヤバいでしょ?」

「ああ、あいつか」

でも、どうでもいい。

すべて、壊してしまおう。

俺は、次々に街を焼き尽くしていく。

「俺に、こんな定めをおしつけた世界なんて滅びてしまえ」

気が付いたら、そう呟いていた。

再び、頬を流れてきたしずくは地上の炎によって蒸発して消えた。

「この子がまた、転生して君に会う可能性もあるのにねえ」

誰もいなくなって炎につつまれたパーティー会場でスノウは静かにつぶやいた。

そして、

「だって今回もそうだったんだから」

と付け足したのは誰も聞いていなかった。

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