おつだね

　失業にそなえ、乙四を自力で採ることは可能だろうか。教科書を丸写しすれば合格するに違いない。頭に入るまで何度も写せば良い。学習には長い時間が必要だし、筆記用具の消耗が尋常な量でないことを覚悟しなくてはならない。しかし、労苦を恐れてはならない。挑戦しなければ、成功することはないのだ。

　乙種第４類危険物取扱者をターゲットとし作戦を決行する。まず教科書を準備しなければならない。書店で買うのが手っ取り早いだろう。だが、そうはしない。新品を使えば合格できるというような安易な考えではいけないのだ。古本屋へ行く。資格試験用のコーナーへ行くと最近のものは値段が高いようだ。気を取り直し、低額コーナーへ行く。１２年前のものが売られている。中をみると、汚れはあまりない。これで充分だろう。２コインで買えた。

　次は丸写しの準備にかかる。紙とエンピツを文房具店で買うのが一般的な考えだろう。だが、そうはしない。手書きだから合格できるというような怠惰な考えではいけないのだ。さて、どうする。教科書を丸写しすることで頭に入れていけばよいのだから、なにも手書きの必要はない。ワープロで打ち込めば丸写しはできる。この方法なら、紙とエンピツを消耗しない。それに出来上がったテキストファイルは再利用できる。われながらにいいアイデアだ。ワープロ打ちで頭に入るかどうかはやってみれば証明できる。

　実作業に入る。教科書の総ページ数は３００。一日に１０ページ打ち込めば３０日で完了できる。休みを入れても１ヶ月半あれば充分だろう。ワープロを打つことに抵抗はない。親指シフトで入力するからだ。とはいうものの、ここ何年も使っていないから指のリハビリは必要だ。タイピングソフトを使い練習を開始する。キー感覚を取り戻すまでに一週間かかってしまった。これはまずい、と思うものの一日あたりのページ数を増やせば、なんとかなるだろう。