第2話 ワンマン列車は逃げ場がない
これを読んでいる人の中には、電車で通学や通勤をしている人も多いだろう。
電車の中には色んな人間がいるが、その中でもヤバい奴(もしくは奴ら)はどこの地域でも一定数いる。
JRのように列車が何両かあるものなら、そういった「ヤバい奴」から逃げられる。
が、ワンマン列車の場合そうはいかない。
車両が1両の場合逃げ場がないため、目的地に着くまで地獄を見る羽目になる。
今回は、私がワンマン列車で遭遇したヤバい奴らについてお話していこう。
―――某日、私は用事のため仕事を休んでワンマン列車に乗車した。
平日で、なおかつ日中だったので、そんなに人はいないだろう、多くても老人会とかその手のグループぐらいだろうと高をくくっていた。
そんな私の希望は見事に打ち砕かれることになる。
なんと、きゃっきゃとはしゃぎまわる、10人くらいの若いグループが乗車してきたのだ。
いや、平日だからといって若い人が乗ってくるのは別に問題ない。私と同じように休みを取った社会人か、もしくは休暇中の大学生の可能性も捨てきれない。
そう、若い人だからとか、そういうのは大した問題ではない。問題は、くそでかい声で喋りまくるグループに囲まれて逃げれない状況だ。
※そしてなぜか座席に座らず、恰好を付けて座席の淵に腕をかけて話しているグループの仲間らしき男もいた。これもあって、前方の方に逃げることが叶わなかったのだ。
私が乗車していたワンマン列車は1両編成。他の車両に移動するなんてことはもちろん不可能だ。
目的地に着くまでの間トイレに引きこもるか?いいや、そんなことをしたら他の乗客に迷惑がかかる。
乗務員に注意を促すか?そもそも運転手しかいないので、その方法も無意味だった。
ならばイヤホンで音楽や動画を見て気を紛らわすか?その方法も試みた。しかし、試みは無駄だった。
彼ら・彼女らの声は、イヤホンを貫通してくる。なので、音楽や動画に集中できる環境ではなかった。
私のイライラが徐々に高まっていった。
ただでさえその日は気分が優れず、緊張で体ががちがちになっていた。そんな時に若者グループのはしゃぎ声が槍のように貫いてくるのだ。
結局私は耐え切れず、列車の後方に逃げた。
そこで買ったばかりのイヤーマフを付けて徹底的に音をシャットアウトし、目的地に着くまでの間景色を見つつ、はしゃぎまくる彼ら・彼女らにここでは到底書けないような呪詛を心の中でつぶやいていた。
目的地の駅に停車した瞬間、私は風のように素早く列車から降りた。
改札を出て、ふと駅から発車する電車を見た私は悟った。
ワンマン列車は本当に逃げ場所がない。
ヤバい奴(奴ら)が乗ってきたなら、その時は目的地に着くまで死に匹敵するほどの苦痛をも覚悟せねばならない、と。
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