九月三日(塚浦正樹の日記より)
今日はドラえもんの誕生日だ。テレビをつけて、ぼんやりと眺めていると、ドラえもんの誕生日ということで特別アニメが始まった。俺はドラえもんがあまり好きじゃないから急いで消した。消した画面には信じられないくらいに赤い夕陽が黒い画面に映った。思い出した。
小さい頃、というか俺が小学三年の幼い少年だった頃、俺は漢字テストで百点中三点をとったことがあった。確か、三問目の「文」を一切思い出すことができず、悩みになやんで最後の10秒あたりに思い出すことが出来たが、その三問しか解いていないので結果は三点。そんな感じだ。それ以来、俺は漢字に苦手意識があった。それは高校まで続き、とうとう親に指摘された。俺はその「三点事件」について話したが、親はどうやらそんなこと記憶にないというのだ。親曰く、その頃他の子が三点を取った話なら覚えている、ということらしい。
当時の俺は三点をとっていないのか。それとも説教を避けるために他の人、というていで話したのか。前者だとすれば俺は存在しない何かに怯えていたことになる。一般化すれば、俺の記憶はホラー映画なのだ。何か今、抱えたことのない感情が俺は取り巻いている。言語化する。
つらら、マンホール、いや違う、洞窟?黄色い 鉛筆
だめだ、変な単語が浮かんでくる。今日はもう寝ようと思う。もし俺がロックスターになって三十歳で死んだら、多分伝説になる。この日記も出版されるだろう、ベストセラー間違いなしだ。もしこれを読む者の中に言語化できる者がいたら、今すぐ死んで天国にいる三十歳の俺に会いに来てほしい。
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