ショートショートの箱庭

みしまゆう

ライナスの幽霊

1年ほど前からおばけと同居している。ボロきれの毛布がふわりと浮かんで枕元にいたときは驚いたが、悪さをするわけでもなくただ僕が眠るまでそこにいるだけなのでほっといている。

1年前から僕は不眠気味だった。朝が来ることが怖かった。おばけは僕が寝ないと心配そうにくるくると回る。終いにはベッドの縁で寝るまでじっと待っているのでなんだか居たたまれない。仕方ないから寝落ちるまで1日の出来事を話すようになった。おばけ相手でも聞いてくれる安心からかここ最近はよく眠れていた。それが日課になって、1年が経とうとしている。

ところで明日は、僕の飼っていた犬の命日だ。ライナス、と名付けていた。

久しぶりに朝を迎えるのが怖い。

ライナス。お気に入りの毛布に取り憑いて僕の前に現れた亡霊。明日が来ても毛布おばけは枕元にいてくれるだろうか。そばにいてくれるだけでいい。またひとりぼっちにはなりたくないんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る