魔法
私の屋敷に普段、私が魔法を学ぶのに使っている大きな図書室がある。
私はそこにティアと共にやってきていた。
「ま、まず、魔法についての概要は知っている?」
「うん。魔法とは生命であれば誰もが持っている力。魔力を用いて発動する奇跡のこと、だよね?……でも、ここまでしか知らない」
「うん。大正解っ。そこまで知っているだけで大丈夫、だよぉ?そ、それで魔法は属性に分かれていて、地、水、風、火に分かれているのっ」
厳密に言うと違うんだけど……まだ、この説明でいいよね?
基本的に四大属性の概念がこの世界の基礎になっているし。
「そ、それで魔法発動のプロセスとしては何の属性にも染まっていない魔力に属性を与えて属性魔力へと変換。そして、体の中にある属性魔力を体外に放出することで魔法になるのっ」
「うん」
「そ、それで魔法には初等魔法と高等魔法の二つに、大きく分けられているの……えっと、そ、それでね?初頭魔法はただ属性魔力を体外に放出しただけ。初等魔法は少量の土を出す、少量の水を出す、そよ風を起こす、火種を起こす。この程度だけしかできない」
「家事には便利そう」
「そ、そうねっ。わ、私もそう思うよぉ……?で、でも、これを攻撃に使うのは中々に困難だから。これらの形を変える必要があるの。そのために必要となるのが魔法陣であり、詠唱、なのっつ。体外へと放出する際に魔法陣を展開することで初等魔法の在り方に変化を加えるの。出す量を多くしたり、形を変えたり」
「攻撃……力っ!」
「そ、そうっ。力っ。魔法はね?魔力でもってこの世界の法則に干渉する力なの……ま、魔法はね?この世界にあるセフィロトの樹について触れることなの。セフィロトの樹を構成している文字式を読み解き、それを読み上げ、セフィロトの樹に書かれている事象を引き起こす……そ、それが詠唱なの」
「ほん?……魔法は、神様によるものじゃないの?」
「そ、そうとされているんだけどね?でも、違う……神様は、そこまで万能じゃないっ。か、神様だって、多分、私たちと同じような形で魔法を使っている、と思うわ」
「そう、なの?」
「う、うん。絶対に、そう。もしかしたら、セフィロトの樹をすべて見れる、とか?そんなすっごい能力は持っているかもしれないけど……で、でも。それだけだと思うの。わ、私はね?今、セフィロトの樹を、自分なりのセフィロトの樹を作ろうとしているの……も、元あるものを読み上げるだけじゃ、ただ、世界を構成している要素。この世界で起きうる事象を、ただ自分の手元に作れるだけっ。だ、だから、本当の意味での奇跡は起こせない。わ、私は……奇跡を起こしたい。起こしてみたい」
「……すごいことしている」
「え、えへへ?そうかなぁ……そうかもぉっ。魔法に関しては自信あるからぁ」
魔法は私の人生のすべてだ。
ちょっぴり自信がある。
「うん。すごい」
「ありがとぉ……あっ、えっと、それで……補足として、魔力には色々な使い方もあってぇ……まず、属性変換をせずに体外へと出す方法もあって、それが身体強化魔法って言われるものぉ。一般的には無属性魔法って言われている、かな?そ、それで他にも魔力をそのまま筋肉に変換したりも出来るの」
「うん」
「こ、こっちの方はあくまで筋力への上乗せ。底上げしているだけに過ぎない、かなぁ?し、身体強化魔法のように人体を可変化するまでのことは出来ないかな?身体強化魔法は、関節が1つ増えたかのような動きも出来たり、脳の処理速度を上げたり、色々なことに使えるから……筋力を増やすだけではそんな、色々なことはできない、かな?」
これ、一旦の説明は終わり、かな?うん……大丈夫だと思う。
「じゃ、じゃあ……これが初心者用の魔法の使い方講座……読める?」
魔法の概略について語り終わった私は本棚に置いてある本を一冊、魔法で私たちの元まで持ってきてテーブルの上に広げる。
「うん。読める」
文字は、読めるみたいだった。
私の言葉に頷いたティアはその視線を本の中へと落とし、そのまま本へとかじりつきになってしまう。
「……」
その様子は真剣そのもので、もう私のことなんか忘れてしまったかのように読みふけっていた。
「すぅぅぅぅ」
そんな中で、私は一度、深呼吸をする。
「……すぅぅぅぅぅぅ」
めっちゃいい匂いするよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
お、同じシャンプーを、シャンプーを使っているはずなのにぃっ、何でかわからないけど、すっごいいい匂いがしているっ。私の匂いとは何でか違うっ。多幸感を脳に直接届けてくれる……本当にいい香りだ。
「ふへ」
あぁ……ティアを吸っているだけで元気になっちゃう。
自分の膝の中にすっぽりと収まっているティアの頭の上で私は自分の口元をだらしなく緩ませる。
「……」
真面目に、そう真面目にティアがその手元にある本を読んでいた中で、私はお日様の匂いがするティアの頭を密かに吸い続けていた。
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