Dear.私の大好きな人へ
天野 つむぎ
第1話
「じゃあね。」
「うん。」
「ばいばい。」
「うん。」
「ありがとう。」
「うん。」
今日で、4年間付き合ってた彼氏とお別れした。
もともと、結婚を前提にお付き合いしていたものの、なかなかプロポーズしてくれない彼氏に苛立ちを感じ、プロポーズをしてくれない理由を問い詰めたところ、彼に婚約者がいたことがわかった。彼も、知らなかったらしい。ある日、急に言われたと言っていたっけ。彼の両親は、今お付き合いしている彼女とは、近いうちに別れろと言われていたらしい。でも、別れをなかなか切り出せず、プロポーズもできず、ズルズルと長続きしてしまったと言われた。彼も、両親には婚約者とは結婚しないと反対したらしいが、取り付く島もなかったらしい。きみを騙すようなことをさせてしまって申し訳なかったと謝られた。
でも、いつか結婚してしまう彼とずっとこの関係を続けるわけにもいかないので、私の方から、別れを切り出した。彼は、諦めたような顔をして、それを受け入れた。でも、別れる前に一つだけお願いがある。彼にそう言われた。
「10月16日までは、別れたくない。」
「.....。」
「17日になったらきちんと別れるから。16日までは、今の関係を続けていたい。」
「....わかった。」
「でも、17日になったら、この関係も終わりだからね。」
「うん。」
10月16日。それは私達が付き合った日だった。
あなたに、告白された日。わたしたちの中で1番嬉しい日。
でも、あなたと別れなければいけない日にもなってしまった。
そして、恋人という関係でいられる最終日、つまる10月16日。
最後の日ということもあって、彼の家でお泊りすることにした。
最後のデートではあったけど、なにか特別なことをして過ごすことは、私達らしくなかったから、よく二人でいってたショッピングモールに行って色々見て、映画館にも行った。その後、よく二人で行ってたカフェに行って、映画の感想を言い合った。そして、彼の家に帰って、二人で夜ご飯を作った。
ご飯を食べて、二人でまったりしながら、今までのことを色々話した。楽しい話から悲しい話まですべて。
「もう寝よっか。」
「うん...。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
私は明日いつも彼が起きないくらいの時間に早起きして、彼の家に置きっぱなしにしてあったものを全部詰めて出ていく予定だ。彼に知られないように...。
彼に見つからないように...。
A.M.5:30
セットしておいたアラームを素早く止めて急いで支度をした。
彼が起きないように静かに。
「じゃあね。行ってきます...。」
「...。なんで、俺に何も言わずに出ていこうとするの?」
「っ!?」
「最後くらい俺にもお見送りさせてよ...。」
「...ごめん。」
あなたを起こさなかったのにはちゃんと
あなたにお見送りをされるとあなたと離れたくなくなるから。
あなたとまだ付き合っていたいから。
昨日、思い出に花を咲かせていたとき、気づいた。
まだ、あなたのことを好きだということに。だからこそ、これ以上話していたら、耐えられなくなると思った。だから、私の気が変わらないうちに終わりにさせようと思っていたのに...。
「じゃあね。」
「うん。」
「ばいばい。」
「うん。」
「ありがとう。」
「うん。」
さようなら、私の大好きな人。
「最後に一つだけ、聞いてもいい?」
「いいよ、なに?」
「君は幸せでしたか?」
「っ!...はい。これでもかっていうくらい幸せでしたよ。」
「そうですか...。それはよかった。」
「私からもいいですか?」
「はい。」
「雨が降ってきました。」
「っ!...そうですね。雨音が響いています。」
「さようなら。」
「...。」
多分、私は今までも、これからも、あなたのことが大好きです。
終わり。
※雨が降ってきました。...意味:ずっと一緒にいたいです。
雨音が響いています。...意味:もっと一緒にいたいです。
Dear.私の大好きな人へ 天野 つむぎ @tumugi0919
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