中学校の職業体験

stdn0316

第1話

 ある中学校で職業体験を実施した。

 生徒が地域の様々な職場に配属され、数日間仕事を体験するものである。


 生徒が自分の将来について考える大きなきっかけとなる取り組みであり、学校側も重要なことと認識していた。


 職業体験に行った生徒は、体験終了後にレポートを提出することになり、以下の内容について記述する。


 ①体験に行った職場

 ②具体的な仕事内容

 ③仕事中に意識したこと

 ④全体的な感想


 体験終了後のレポートを確認していたある教員が、あり得ないことに気づいたという。


 3人の女子生徒から派遣したはずのない職場についてのレポートが提出されており、レポートの記載内容は文言に微妙な差異はあれど以下のようであった。


 ①◾️◾️研究所

 ②朝、昼、退勤前に「正常です」と3回唱える

 ③大きな声ではっきりと伝えること

 ④正常になれました


 当該生徒に聞き取りを行ったが、この記載内容の体験をしたことに間違いはなく、3人で示し合わせてもいないという。

 3人とも真面目で、嘘をつくタイプではない。


 ◾️◾️研究所という場所についての情報はなく、ネット上のオカルトサイトで同名の宗教施設跡が隣県の山奥にあるという書き込みが見つかっただけであった。中学生が行ける距離ではない。


 何度確認しても3人が他に行った体験先は判明せず、施設の場所やそこで会った人についてもよく思い出せないという。


 保護者の話では、毎日楽しそうに出かけていたとのことであった。

 生徒が詳細不明の施設に通っていたことは教育委員会にまでエスカレーションされる事態になったものの、結局公にされることはなかった。


 3人はその後も変わった様子はなく学校に通い、市内の高校に進学した。

 高校卒業後、施設のあったという噂の隣県に引っ越したらしいということだが、同級生も連絡が取れず詳しいことを知る者はいない。










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