魔導帝国の優雅な一日

ここは【魔導帝国】、世界有数の巨大国家である。

ここまで勢力を伸ばしている理由はいち早く魔法という技術を導入した事と圧倒的な国民の数に起因する。


そう、あのパッツパツはかつてここに所属していたのだが、国内のレストランで「パンツ一丁の変態が居る」だの「美味しい食事を変態的なファッションが帳消しにしている」だのクレームが殺到した事でクビになり、更にここぞと言う時に追放を言い渡された為、放流となったのだ。


しかし、ただ簡単に「出ていけ変態」と言う訳にもいかなかった。

何せもし仮に厄介な隣国などに行けば国内の情報を抜き取られる心配があったからだ。

情報を抜き取られるであろう国も無く、尚且つ過酷な場所が何処かと考えた結果北へと放流になった。


何故北なのかと言えば、あの【鉄の山】に住まうイエティを筆頭とした数々の怪物に過酷な吹雪によって極寒地獄と化していたからに他ならない。

まさか、あの環境に放り投げても生き残ってるだなんて、誰も思っても見なかったのだろう。


これは、それより数日後の出来事である……。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「パンが旨い!!」


私の名前はアザラシ。

少し前にあの変態をシベリア送り(北へ追放)にしてから、私の心は晴れやかだ。

ログインしたらパンツ一丁の変態が飛び込んで来る事が無いというだけで人間健やかになれるものだな。


コンコン。


「失礼します。参謀総長、【神聖マヨネーズ】と【バンディット】との同盟を確認しました」

「ふん、マヨラー共も堕ちたものよ。まさか、あの荒くれ者共と手を組むなんてな」


【神聖マヨネーズ】とは最も厄介と思われる隣国でいわゆる宗教国家。

奴らはマヨネーズを”聖なる食べ物”として崇めてるマヨラー集団だが、それ故に結束力も高い。

だが最近勢いが落ちてきてる故、滅びるのも時間の問題だろうな。


そして【バンディット】、こいつらは荒くれ者の集団で他のゲームでいうPKを好んでするような者達ばかりで構成されている。

日々、対人戦ばかりを行っており対処するには既に犠牲が出過ぎている。

早急に決着をつけなければ更に被害が広がるばかりであろう。


あと気になる国は【鬼ヶ島】ぐらいか。

奴らはその国民のほとんどが鬼で構成されているようでnpcの国だと甘くみてはいけない。

まずは商人を送って友好関係を築きたい所だ。


「ごく多少の不安要素はあれど、【魔導帝国】としては順調そのものだな」


このまま行けば天下統一も夢ではないだろう。

皇帝袋雨フクロウをリーダーにして良かった。

あいつには人望があるから、人口が多いであろう帝国国民が一致団結してるのはかなりデカい。

反乱される心配も無いな。


バンッ!!


そう思いパンを齧りながら外の景色を見ていると、突然後から大きな音が鳴り響いた。

振り返ると、そこには【鬼ヶ島】の商人として出発した夜叉ヤシャが苦悶の表情で帰還を果たしていた。


「どうしたんだ、そんなに苛ついて」

「どうしたもこうしたもねぇぜ、マジで有りえねぇ。羅刹とかいう鬼の王様だか何だか知らねぇが、突然取引を無かった事にするとか言い出しやがったんだ!!」


つまり【鬼ヶ島】との取引は失敗したという事か。

しかし突然取引を一方的に停止するなんて、一体何があったと言うんだ。


「痣ラシ、兵を寄越せ。これは戦争だぞ」

「まぁ待て、今は複数の仮想敵国との戦争が控えてるんだ。こんな時に戦線を広げる気か」

「だが……!!」

「苛つく気持ちも分かるが我慢だ。でなきゃ国が滅ぶ」

「ちっ……」


そうだ、いかに我々には魔法があるとは言え油断してはいけない。

これは隙を作った方の負けなんだ。

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