息絶えるには最悪な天気
「そんなあからさまな弱点を突こうとしてくる事ぐらい分かってるんだよ」
ファランクスの陣形を構えていて正面では突破不可能だと悟った時、相手は弱点を突こうとするだろう。
何故なら大抵の陣形は弱点を突いた方の勝ちなのだから。
だがその行動を黙って見ているはず無いんだよなぁ。
「わざわざ両側を林で覆ったのは罠を隠すためだぜ」
落とし穴の下に氷ノ槍を敷き詰めておいて、ハマった相手を伏兵で一網打尽。
単純な罠ほどふとした時に引っ掛かりやすいものだ。
偵察隊にバレる事だけは避けたかったから、誰も逃さずに暗殺出来たのは良かったな。
「やったぁ!! 撃退したぞ!!」
「わーい、わーい!!」
精神年齢幼児だと思ってたが、前々から狩りしてたと言われてるだけあって敵を殺すのに躊躇いは無いな。
ここから先は躊躇った者が死ぬ世界、立派な戦士になれるぜお前ら。
「まだ喜ぶのはまだ早いぜ。本番はこれからだ」
「そっか、これから打って出るんだもんね」
「おーい!!」
タイミングピッタリ、向かわせてた我々の偵察隊が帰ってきたようだな。
偵察隊の情報としては、我々【スノーフォックス】の拠点としてる雪山(正確には【極寒の霊峰】と呼ばれているらしい)との向かいに【鉄の山】と呼ばれる山がある。
その中にイエティのアジトがあるらしい。
「それに、イエティの目的は……」
「…………ふむふむ、なるほど。素晴らしい成果だ。では、早速向かおうか――――おっと、今回は〈吹雪〉を使うからそのつもりで頼むよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〈吹雪〉の事を詳しく聞いてみると、どうやら十人の雪の妖精が同時に詠唱してようやく発動できるものらしい。
詠唱するのにも十数秒のラグがあるもので、基本的に突破されると想定される状況で
だがその威力は絶大で周囲に居るモンスターの極寒ゲージを即座に上昇させ凍らせるというチートっぷり。
まぁ九尾の焔のような耐寒装備やアイテムを使用されれば普通に防げはするから、そこがバレなければ全然使えるマップ兵器と成り得るだろう。
ちなみに天気は関係ないらしい。
今回の襲撃はわざと天気を晴天にさせて意図的に襲撃するタイミングをコントロールさせて貰っただけだ。
今頃襲撃が成功したと息巻いて楽しみに待っているんじゃないだろうか。
帰って来るのは我々だがね。
「「「〈吹雪〉!!」」」
突如、ここ【鉄の山】は〈吹雪〉が吹き荒れる過酷な環境へと様変わりした。
これでイエティ共はアジトから出られない。
もし出たら速攻で凍りつくだろうな。
「な、何故お前らがここに居る!!」
我々はアジトの中に押し入る。
重厚な盾と槍を持って出口を塞いだ。
イエティ達は恐怖の顔を変えずに遠吠えを繰り返している。
「何故って……君たちの襲撃が失敗して尚且つここの居場所がバレたからだろう?」
おもむろに周囲を見渡して睨見つける。
残存兵力はそう多くはない。
どうやら先ほどの戦でほとんどのイエティ共を出払ったらしいな。
「こんな事してただで……ぐはっ……!!」
一人の妖精が槍で身の程知らずを突き刺した。
「おっと、無駄な抵抗はするなよ? お前達は戦いに負けたんだから」
「くっ……何が望みだ」
「何、我々の軍門に下って我が国の為に働いてくれればそれでいい。むしろ、君たちに褒美を与える事を約束しよう。例えば――――お魚とか?」
「…………?!」
先ほどから偵察隊がイエティの目的を話してくれたんだ。
お前達は【極寒の霊峰】の先の海に行って食料を得たかったんだろ?
なら、それをくれてやろうじゃないか。
くれてやる代わりに我々の為に働け……たった、たったそれだけの事だ。
「具体的には何を」
「そうだな……ここの名前は確か【鉄の山】と言ったか。鉄鉱石でもあるのか?」
「鉄鉱石……? あの所々にある石の事か、あれが欲しいのか?」
その石の方に目を向けると、確かにグロは鉄鉱石だと示してくれているようだ。
ここの者達はあれらの価値が分かっていないようだから、我々が有効活用しなければな。
「あぁ、そうとも。その石を採掘して納品してくれれば君たちが望む食料をやろうじゃないか」
「…………食料を得られるのは我らイエティの望み、それを叶えてくれるのなら忠誠を誓います」
[エリア【鉄の山】を占領しました]
[イエティは【スノーフォックス】に加入しました]
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