第2話 新規登録


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冒頭まで残り5日

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 新規登録、というのが、事前に情報を集めていたダンジョンのシステムへの登録というやつだろう。


 視界は次元の穴をくぐった時から、ずっと謎の白い光に包まれている。

 前を見ても後ろを見ても、出口のない謎空間だ。


 どうしたらいいのかはさっぱりわからないが、ひとまず脳内で『登録します!』と大声で答えてみた。



『ダンジョン登録の意思を確認しました。これより新規登録を行います。しばらくそのままでお待ちください』



 俺の思いが通じたようで、お役所のような定型が返ってきて、しばし待たされる。

 その間、自身の肉体をサーチされているような、されていないような不思議な感覚が走っていた。

 ややあって、登録が終わったことを告げる声が流れた。


『登録が完了しました。ステータスは、ダンジョン入り口、および各階層の出入り口に設置されている端末にてご確認ください。それでは『上杉志摩うえすぎしま様』。我々はあなたの挑戦を歓迎いたします』


 本当に歓迎しているのか怪しい定型文が再び響き、視界は白一色から解放された。

 ぼんやりと浮かんでくるのは、土色の石のような壁や床、天井が特徴の、3Dダンジョン系によくある風景の通路だった。

 背後を見ると、入ってきた時と同じような、丸い次元の穴がある。帰還者がいるのでそこまで心配はしていなかったが、帰れないことはなさそうで安心した。


「……まずはステータスの確認か」


 まさしくといったダンジョンの風景への感動もそこそこに、俺はひとまずアナウンスされた通り、ダンジョンに備え付けられている端末とやらを探した。

 端末はすぐに見つかる。

 ダンジョンの建築様式にそぐわない、中に浮かぶホログラムのような画面が、ぼんやりと浮かんでいる。


「タッチパネル式か?」


 画面と思しき四角い面をタッチすると、ブゥンと鈍い音を立てて、その端末は起動した。


『おはようございます。新規登録者の接続を確認しました』

「うぉ。喋った」

『画面の案内に従って、操作を行ってください。何か質問がある場合は、口頭か念話にてお申し付けください』


 端末はそう言って沈黙すると、項目を表示させる。

 画面には以下のような項目があった。


【ステータス】

【レベルアップ】

【スキル習得】

【ジョブ習得】

【アイテム購入】

【アイテム納品】


 この辺りの情報は、あまり開示されていなかったので詳しくは知らない。

 各項目が気にはなるが、とりあえず当初の目的だった【ステータス確認】をタップする。


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【ステータス】


 上杉 志摩

 ノービス(無職)

 レベル1

 所持EP:0


 HP:32/32

 CP:29/29


 力:8

 魔:10

 体:7

 速:8

 運:9


【所持スキル】

 なし


【セットスキル】

 なし

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 うん。

 強いのか弱いのかさっぱり分からん。

 とりあえず分かることは、魔力的な何かはそこそこありそうってことくらいか。

 逆に、耐久力的な何かはあんまりなさそうだから、多分後衛寄りのステータスなんだろうな。


「どっちかと言ったら、ソロで潜る以上は前衛寄りの方が嬉しい気もするんだが」


 と、こぼしたところで、計測されたステータスが変わるわけじゃない。

 気になるところはあるが、一度ステータスを閉じ、他の項目も確認してみた。


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【レベルアップ】

 所持EP:0


 レベル2に上がるために必要なEPは10です。



【スキル習得】

 所持EP:0


 現在取得可能なスキルはありません。



【ジョブ習得】

 所持EP:0


 ジョブの習得はレベル10から解禁されます。



【アイテム購入】

 所持EP:0


 現在購入可能なアイテムはありません。



【アイテム納品】

 所持EP:0


 現在納品可能なアイテムを所持していません。


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 うん。何もできないね。

 とりあえず各項目を選択してみたけど、わかったことは俺の所持EPが0であることと、今できることは何もないことだ。

 ここまでくるとさすがに疑問も湧いてくる。


 いったいEPとはなんなのか。


 事前に調べていた限りだと、モンスターを倒すと手に入るポイントだとかはあったはずなので、おそらくそれだとは思うのだが。

 確認しておいて損はあるまい。


「質問良いですか。このEPというのはなんですか?」


 困ったときのヘルプということで端末に呼びかけてみる。


『質問を確認しました。EPの説明を開始します』


 端末は俺の疑問に応えて、画面に映像を流しながらEPの説明を行ってくれる。


『EPとは、皆様が自身の強化等を行うために必要なポイントになります。これは皆様の肉体の改造や、アイテムの製造を行うためのエネルギーを数値化したものであり、モンスターの討伐や、ドロップアイテムの納品を行うことで獲得できます』


 言いながら端末は、人がゴブリンを剣で切りつけたあとそのゴブリンからEPが人へと流れ込む映像や、ドロップしたアイテムを端末に納品すると分解されてポイントになる映像などを流してくれる。


『レベルアップに必要なEPはレベルが上がるごとに上昇します。また強力なスキルやジョブを獲得するためにはより多くのEPを必要とします』


 つまり、用途の多い経験値のようなものなのだろう。

 そう理解したところで、さらに補足が入る。


『注意点として、EPはダンジョンの外に持ち出すことはできません。未消費のEPが存在する場合、ダンジョンから出る際に自動的にEP結晶へと変換されます。この変換は不可逆となりますので、ご注意ください』


 ちょっと聞き捨てならない発言があった気がした。

 確かに事前に調べた情報では、余ったポイントをエネルギー資源に変換できるみたいなことは聞いていた。

 だが、その変換が強制だとは聞いていない。


「つまり、レベルアップに必要なEPは、一回のダンジョンアタックで稼がないといけないということですか?」


『その通りです』


「なるほどなー」


 結構きつい仕様だなと思う反面、設計者の意図もなんとなく見える。

 雑魚を狩り続けてのレベルアップをさせたくないんだろう。


 一回のダンジョンアタックにどれくらい時間をかけるのかは定かではないが、そのうち雑魚敵からの獲得EPとレベルアップの必要EPが釣り合わなくなるのは明白。

 強くなりたいなら深く潜れ、でないなら資源を適当に集めて帰れというメッセージだろう。


 それを裏付けるかのような情報は、次に【ステータス】の質問をすることで得られた。

 ステータスの意味はそれぞれ次のような感じらしい。


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 HP:0になるまで対象が受けるダメージを肩代わりする。HPは回復アイテムを使用するか、時間経過で回復する。


 CP:パッシブスキルのセット、およびアクティブスキルの使用に主に使われる。CPは回復アイテムを使用するか、時間経過で回復する。


 ──────

 

 HPとCP──多分MPとかに相当──は、回復までに時間がかかりそうだ。

 ダンジョンに泊り込む覚悟がなければ、雑魚でずっと経験値を稼ぐことはできないのだろう。


 ついでに他の力とか魔とかはだいたいイメージ通りだったので、割愛する。

 あえて言うならば、力と体はHPに、魔と運はCPに補正が入るらしい。


 そのほかにも色々と質問して分かったことをまとめると。


・スキルは習得条件を満たすことでリストに追加され、EPを払うことで習得できる。

・パッシブスキルは装備する際に最大CPをコストとして払い、アクティブスキルは使用時に現在CPをコストとして払う。

・レベル10で就くことができるジョブは条件を満たしているもの。購入したジョブは付け替え可能だが、レベル10から先はジョブごとにレベル管理されている。

・アイテム購入のラインナップは、ドロップアイテムの納品、およびモンスターの討伐実績に応じて増えていく。


 特にパッシブスキルが最大CPをコストとして要求するのが、なかなかネックに思えた。

 脳筋ステータスおばけはCPがカツカツになってアクティブスキルが使えなくなり、逆にアクティブスキルに比重を傾けると、本体性能は貧弱になっていくのだろう。

 パッシブスキルは自由に付け替え可能らしいので、EPを無駄にすれば試行錯誤できそうなのは幸いだ。


 とりあえず、現時点で知りたいことはだいたい知れたので、最後に「出来たら」くらいの気持ちで尋ねてみる。


「このダンジョンに出現するモンスターとかギミックは教えてもらえますか?」


 端末は、俺の質問に少しだけ時間を置いてから返した。



『ダンジョンの攻略情報は、あなたの攻略進度に応じて順次解禁されます。まずはご自身の目で確かめてください。ミスター。これはあなたの冒険です』

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