第一章:異変の始まり

取材のため、元住人だった女性の証言を聞くことに成功した。彼女は「絶対に近づくな」と繰り返しながら、震える声でこう言った。


「あのアパートに住んだ人はね……そのうち、みんな気づくの。自分がどこにいたか分からなくなるって」


翔太たちは笑って話を流したが、その夜から不可解なことが起こり始めた。


録画した映像の中に、見知らぬ男が映っている。

最初は通行人かと思ったが、カットを変えても、別の角度からも、その男はずっとカメラを見つめていた。


「気持ち悪いな……」亮太がぼそっと言う。


「まあ、偶然だろ」翔太はそう言いながらも、カメラのファインダーを覗く手が震えていた。


翌日、彼らは再びアパートを訪れるが、今度は中に入った途端、裕介の姿が見えなくなった。


「おい、どこ行った?」


呼んでも返事がない。だが、翔太がカメラを確認すると、そこには笑顔の裕介がちゃんと映っていた。


「え?」


カメラ越しでは見えるのに、肉眼では見えない。


「ふざけんなよ……!」翔太はパニックになりながら、カメラを手放す。その瞬間、画面の中の裕介が不自然にこちらを向き、笑った。


「こっち、来いよ」

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