『喧騒の隙間』 ――都会に潜む、もうひとつの世界
如月 煌
プロローグ:奇妙なアパート
「ここ、本当にあるのか?」
翔太はスマホの地図を見つめながら、顔を上げた。目の前には、ひどく古びたアパートがそびえている。だが、マップ上には何も表示されていない。
彼は背後を振り返り、カメラを持つ裕介、音声を担当する奈々、考察担当の亮太の顔を見た。
「やっぱりヤバい場所なんじゃないの?」奈々が不安げに言う。
「だからこそ撮る価値があるんだよ」翔太は笑い、カメラの電源を入れた。
数年前からネットで噂になっている『消えるアパート』。ここに住んでいた住人が次々と失踪し、しまいには存在すら忘れ去られていくという都市伝説。
「記録に残らない場所に、足を踏み入れたらどうなるのか」
それを確かめるため、彼らはアパートの中へと足を踏み入れた。
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