君は気まぐれ
華周夏
君は気まぐれ
大雪なんて 迷惑なだけなのに
「君は雪掻きができるね」
嬉しそうに 降水確率の数字と
雪だるまのイラストを見て 君は笑う
指先が感覚が 麻痺して真っ赤になるだけ
耳もじりじり痛くて やっぱり真っ赤になるだけ
でも 積もった雪に光が指すと
あまりにも綺麗で泣きたくなる
きらきらひかる雪の光は
眩しくて全てを消し去って
音も軽い肺呼吸すら呑みこんで
静寂だけを連れてくる
無音 雪は音を食べていく
そしてまた雪が降る
君はまた無神経に笑顔で
「明日の雪掻きが楽しみだね」
なんて言う
雪の降る音があったら どんな音だろう
シャンシャン?
リンリン?
ルルルルルラリ?
突拍子もないことばかり言って
まるで君が雪だ
気まぐれに降って
溶けて
必ずまた来るなんて言って 来なくて
スコップに山盛りになるくらいの
君の好きなお菓子も用意してあるんだ
でも 君は気まぐれ
君は来ない
一緒に雪掻きなんか
しないじゃないか
一度も雪掻きなんか一緒に
したことなんて無いじゃないか
君は僕を見つめる
だから僕も君を見つめる
大きな焦げ茶色の虹彩が綺麗だ
何処か君がいないと落ち着かないこの季節
ぼやいても雪は降る
大雪だ 天気予報の雪だるま 等圧線
今シーズン一番の寒波
君と言ったら いつも雪が降る前の日に来る
爆弾低気圧の停滞前線のタクシー
古いアパートから窓を開けて
雪掻きする僕に手を振って
「頑張って!」
なんて笑いながら高みの見物を決め込んでいた
あの時 確かに君を好きだった
君は気まぐれ
雪の降る寒い日に
炬燵にあたる膝の上でまるまる猫のよう
古いアパートから窓を開けて手を振って
「一段落ついたらおしるこ一緒に食べよう?」
指先がかじかんで真っ赤になった
耳もじりじり痛くてやっぱり真っ赤になった
そんなところは見ていなくて
君は ただ単純に僕を見つめて
そう言って 笑ってたっけ
おしるこをつくるのは 僕
どうして君が好きなんだろう
理由なんて無い
寒い日のおしること一緒だ
君は猫みたいだ
本当に寒いのが嫌いな
気ままな寂しがりや
君は雪だ
皆に色々言われながら
本当は誰よりも春を待つ 陽の光を待つ
溶けて消えてしまうのは
僕も君も
解ってるんだ
雪のように気儘で 厄介で
おしるこのように温かで やさしい子
それでも独り 居場所を探す
捨て猫のような 悲しい子
君は気まぐれ 華周夏 @kasyu_natu0802
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