怪事 / 短編小説集
@Lumonde831
鳥籠
鳥籠
先輩は空が好きだった。
先輩はいつも放課後は屋上で空を眺めている。
「私も鳥みたいに空が飛べたらいいのに.... 」
先輩は母子家庭で育った。
幼いころに父親が蒸発し、母親は昼夜問わず働きに出ていた。
贅沢などできず、旅行にも行ったことがなかった。
テレビで流れていた子供向けアニメでは、便利な道具がたくさん登場しており、憧れていた。
先輩には弟がいた。
先輩は登校も下校も、いつも横には弟がいた。
先輩は学内では美形な方だったこともあり、恋文を受け取ることも多かった。
弟は先輩への恋文を見つけたら破り捨てていた。
弟は先輩が男とふしだらな関係になることを認めなかった。
弟には強い正義感があった。
弟は重度のシスコンだった。
先輩は恋愛小説が好きだった。
いつも見守ってあげて、危機に瀕したヒロインを助けに現れる主人公に憧れていた。
先輩は高校を卒業した。
先輩は大学に入学して一人暮らしになった。
先輩はバイトが忙しかった。
休日はもちろん平日も授業後に働いていた。
先輩のバイト先は居酒屋だった。
バイト先で先輩の教育係になった男はふしだらだった。
バイトの後、先輩は教育係の男と飲みに行った。
次の日、先輩は朝帰りだった。
先輩はバイト先を変えた。
教育係の男は先輩の家に来るようになった。
しかし、先輩は教育係の男を部屋に入れることはなかった。
数日後、教育係の男は先輩の弟と口論になった。
先輩の弟はその数日後、姿を消した。
先輩の部屋のポストには脅迫文が入れられた。
先輩は外へ出ず部屋に閉じこもるようになった。
そのまま一年が過ぎた。
教育係の男は死体遺棄の容疑で逮捕された。
先輩は今もあの部屋にいる。
男は今も彼女を見守っている。
怪事 / 短編小説集 @Lumonde831
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