クリーピーフィッシング。

山本パラパッテイキー

第1話ネット

俺の名前は「高田こうすけ」。18歳の高校生だ。趣味はFPSゲームでよく知らない人とやっている。毎日ゲームに時間を費やし、リアルの友達とはあまり遊ばない。まぁ俺自体があまり現実でどうこうするのが好きじゃない…ってのがあるが。まぁこれは言い訳か。

でもそんな俺にも友達はいる。

それが「甲本しんすけ」だ。俺と同じく高校生であるコイツは中学で出会い、同じ趣味を持っているということで仲良くなった。


(俺「おーい。今日も平野行動しようぜー」

学校が終わり、部活もない俺はすぐ家に帰り、友達であるしんすけに電話をかけ、ゲームを誘う。

しんすけとは同じ学校だがクラスが違うためあまり学校じゃ話せない。そのため電話で誘うのだ。


(しんすけ「あー、わりぃ。今日できねぇ。バイトある」

(俺「あ、バイト?」

(しんすけ「おう。最近始めてさー。だからごめん!」

(俺「そうなら仕方ないか…わかった」

なんだよ…しんすけの野郎、バイトか。そういやアイツバイト始めてーとか言ってたなぁ。

んじゃ今日は野良の人とやるかー。


(俺「よっし。」

この平野行動というゲームではボイスチャットがあり野良の人と会話ができるがほとんど喋る人はいない。そのため俺はボイスチャットをつけることはなく、できる限りのことをゲームチャットを使い会話をする。ゲームチャットとはプレイヤー同士でチャットを使い文で会話できる便利機能だ。


    ーーーチャット内ーーー

《こと》「あのー1番さんボイチャつけてますよ」

    ーーーーーーーーーーー


(俺「えっ?!」

うわっ…まじか。昨日しんすけとボイチャつけてやってたせいで消すの忘れてた。

しんすけが電話がバグかなんかでできねーって言ったためボイチャを仕方なく使うことになったので完全に忘れてた。

(俺「す、すみません…間違えて付けちゃってました。消します」

あぶねぇー。この野良である「こと」さんが教えてくれなければ個人情報とか喋ってしまっていたかもしれない。



     ーーーチャット内ーーー

《こと》「いえいえ!あのよければなんですがボイチャつけたままやってくれませんかね…?」

    ーーーーーーーーーーーーー

(俺「えっ」

ボイチャつけたまま…?。別に俺はボイスチャットをつけているからといって何かダメなことがあるとかはない…けど。

(俺「んー。わかりました。じゃあこのままやりましょ!」


結局俺はボイスチャットをつけてやることに。

俺のボイチャを指摘してくれた人だ。断るのも申し訳ない。

それにボイチャをつけてたほうがスムーズに進む。文を打つよりも戦闘の邪魔にならない。


その後、ゲームは順調に進んでいき、見事俺たちはマッチに勝利することができた。

(俺「よっしゃぁぁあ!勝てましたね!」


    ーーーチャット内ーーー

《こと》「ナイスー!」

《こと》「あの…良かったらフレンドなりませんか?」

   ーーーーーーーーーーーーー

(俺「えっ?」


   ーーーチャット内ーーー

《こと》「こうちゃんさんとプレイするの楽しかったのでこの後もやりたいなーって」

   ーーーーーーーーーーーーー


(俺「フレンドかぁ…わっかりました!なりましょう」

ことさんの言う通り、俺たちは結構楽しくやれていた。連携も上手く取れていたし、チャットだったからっていうのもあるだろうが気まずくもなかった。


そして俺とことさんはフレンドになり、この後1時間ほどプレイした。


   ーーーチャット内ーーー

《こと》「ありがとうございました!そろそろ落ちますね」

《こと》「また明日やりましょう」

   ーーーーーーーーーーーーー


(俺「あっはい!また明日!」

明日もやる約束をして、今日という日は終わった。


        翌日。


(俺「やっべ!遅刻する!」

今日珍しく俺は寝坊をしてしまった。

いつもは早く起き、はやく支度して学校へ向かうのだが…。

(俺「まっずい!ギリギリか?!」

学校はあるいて20分ほどのところにある、いつもはゆっくり歩いて行っているのだが今日はそう言ってられない。



(しんすけ「おーい!こうすけ〜〜〜!」

(俺「ん…?しんすけか」

(しんすけ「こうすけお前今日どうしたんだよ。いつも学校行くの早いのに」

(俺「寝坊したんだよ」

(しんすけ「まじ?珍しぃ〜。俺はいつも寝坊してるから慣れたぜ〜」

(俺「お前、お母さん起こしてくれねぇのか?」

(しんすけ「母ちゃんはいつも10時頃から夜のパートだぞ?朝は寝てるって」

しんすけは母子家庭なのでお母さんは相当苦労しているそうだ。


(しんすけ「あ、昨日俺ゲームできなかったけどお前ゲームしたのか?」

(俺「したぞ!野良の人と仲良くなったし!」

(しんすけ「野良と?」

(俺「そ。それに名前からしてありゃ女子だ」

(しんすけ「いや決めつけんなやw男かもしんねぇーぞ?最近ネカマっていうなりすましみたいなことをやってるやつ多いし」


コイツの言う通りことさんの性別が女子と決まったわけじゃない。でも文章からひしひしと女の子っぽさが伝わってくる。まぁ性別関係なく楽しいから男の人でもいいんだけど。

(俺「てか!そんなことよりはやく学校!!」


俺としんすけは全力でダッシュしてギリギリ学校へ着くことに。


(俺「あっぶねー。もう少しで遅刻だった」

(岡山先生「こら!あぶねー、じゃないでしょ!」

(俺「あっ…岡山先生……」

この怒っている先生は岡山先生。俺のクラスの担任であるおばさん先生だ。歳は53歳。結婚していて子供もいる幸せ家庭の人。

(岡山先生「はやく席について。出席とるから」


(岡山先生「はーい!みんな席ついて〜」


(俺「ふー。やっと一息つけるなーー。」

(ミナ「ね〜?珍しいね?こうすけが遅刻すんの」

俺の隣の席から話しかけて来たのは、

「御子裏ミナ」。しんすけと同じく中学で出会いクラスが何度も同じになったのでそのまま仲良くなった女子だ。

俺がコイツに初てあったときに思ったのは名前がすんごいってこと。御子裏…これはミコウラ、と読む。言っちゃあ悪いが変な苗字だと思う。

初対面の人はみんな名前に触れる。ミナ自身はそれが嫌らしい。


(俺「今日は寝坊したんだよ。」

(ミナ「ふぅーん。そうなんだ。あっ!今日さ、放課後さ勉強一緒にしない?」

(俺「えっ?勉強?うーん…ごめん。今日は帰ってゲームするし」

(ミナ「はぁー?ゲームなんていつもやってるじゃん。またしんすけとでしょ?1日くらいいいじゃん」

(俺「いや、しんすけとじゃなくて野良の人とだから」

(ミナ「野良…?知らない人ってこと?」

(俺「そういうこと」

(ミナ「それなら仕方ない…わけじゃないけど。他人とするってちょっと怖くない?」

(俺「なにが?普通じゃねーか?」

(ミナ「いやだって。家とか特定されたりしてさ、今から会いに行くよ…とか言われたら!きゃー。」

(俺「いやいや…そんなホラー展開まずまずねーだろ。大丈夫だって。」

(ミナ「こうすけアンタ、個人情報とか言っちゃダメよ?わかってんの?」

(俺「俺のこと舐めすぎじゃね?そんなバカじゃねーって」



 


 キンコンカーンコーン。


すべての授業が終わり、また俺の時間…放課後がやってきた。

(俺「よし…帰ろ!!!」



ダッダッダッ!!!

学校の廊下を全力で駆け抜けすぐさま下駄箱へ向かう。

(俺「おっっ?!あっぶね!すません!」

(岡山先生「まーた高田くんは走って!朝もだったじゃない。」

(俺「す、すみません…」

(岡山先生「たっく…いつも走ったりしないのに…どうしたのよ?」

(俺「えっと…この後ゲームをネットの人とする約束なので」

(岡山先生「ネットの人?しんすけ君とじゃなくて?」

(俺「あ、はい。急いでるんで!」

俺に疑問をなげかける先生をフル無視して学校の門をくぐり抜ける。

急げぇ!相手は野良の人だから遅れることなどを報告できない!


ガチャ


(俺「ただいま!」

家のドアを思いっきり開け放ち、家の中へと足を

踏み入れる。

(クロ「にゃーん!」

(俺「わるい!クロ!!かまっている暇はないんだ」

俺の飼い猫であるクロが俺にスリスリしてきたが遊んでいる時間はない。


ダッダッダッ。

階段を音をたてながら登り、自分の部屋のドアを開ける。

(俺「はやく始めよ」

部屋に着くとすぐリユックを下ろし、中からスマホを取り出し起動する。


(俺「ことさんやってかな…?えーとフレンド内に……あ、いる!」

しんすけ合わせほんの数人しかいないフレンド内にことさんは居た。


(俺「ことさーん!こんにちは」


    ーーーチャット内ーーー

《こと》「こんにはー!さっそくやりましょ〜」

    ーーーーーーーーーーーーー



そうして俺とことさんの関係は続いた。


1ヶ月後。




(俺「今日もありがとうございました!」

俺とことさんの関係はもう1ヶ月も続いている。まったくの他人と1ヶ月もゲームをしつづけるなんて俺にとっては初めてだった。

そのためことさんは俺にとって少しづつ特別な存在へと変わっていった。

(俺「ことさん!また明日!」


     ーーーチャット内ーーー

《こと》「あのー…こうちゃんさん、私とSNS繋げません?」

《こと》「もう1ヶ月もやるって私からしたら初めてで…」

    ーーーーーーーーーーーーー

(俺「SNS…?そうですねぇ……」

どうするか?たしかにことさんとは仲良くやってきた。俺だって彼女に特別感を感じている。俺とことさんの出会いは運命なんじゃないのか?みたいな…。そんな思いがある。

でも、いいのか?赤の他人とSNSまで繋げるなんて。

(俺「うーん…わかりました!Yのサブ垢なら!」

Yとは全世界で使用されているSNSアプリ。

それの本垢では結構個人情報を載せてしまっている。サブ垢を作り、ことさんのためだけのアカウントにすれば問題はないだろう。


(俺「繋げますねー。えっと…アカウント名はこうちゃん123ってやつです。」

名前のこうちゃんってのは俺のこうすけという本名をもじったものである。


    ーーーメッセージ内ーーー

《こと》「こうちゃんさんですね?どうも!ことです。」

《こと》「Yでもよろしくお願いします!」

    ーーーーーーーーーーーーー

つなげるとさっそくことさんからメッセージが来た。これでゲーム内以外でも連絡がとれるし、遅れることやらも報告できる!!!。

しかも…ここならボイスメッセージも送れるため彼女も声も聞けるかもしれない。

(俺「えーっと、これがことさんのアカウントか。」

ことさんのアカウントは特に投稿も何もしておらず、今さっき作った俺のアカウントとあまり変わりはない。

(俺「ことっていうのは本名かな?」

(俺「ん…?2016年……?」

そこにはこのアカウントの制作された日にちが載っていた。2016年5月5日と…。この日にアカウントは作られたようだ。てことは今から9年前か…。


(俺「ことさんって何歳なんだ?」

それに何年も前に作られているのになんにも投稿やら呟きやらしていないんだろ?

まぁ…そんな人もいるか。


ピローン♪


(俺「おっ、なんだ?」

通知音がなったと思ったらことさんがメッセージと一緒に何か写真を送ってきていた。


   ーーーメッセージ内ーーー

《こと》「これ私の飼っている猫です!」

添付された猫の写真

   ーーーーーーーーーーーーー

(俺「おっ?猫か!ことさんも猫を飼っているのか〜」

初めてことさんから送られてきた写真はソファの上に寝っ転がった黒猫の写真。とても可愛らしい。

(俺「…は?え?」

だが俺はこの時気づいた。


(俺「これ…クロ?似てるだけか?」

その写真の黒猫はあまりにも俺の飼っている猫と瓜二つだった。目の色も、体の大きさも、毛色も。何もかも。

(俺「ていうか…これソファも……一緒?」

なわけない。そんなわけない。ありえない。

ソファの模様は全く同じ。たまたまなのか?


もしかしてことさんは俺の身内?いやそれはない。俺の家族は父、母、俺、だ。それに時間も考えればこんなことする暇なんて…。父はとある会社の社長。母だって仕事で…こんなことできっこない。じゃあ?この写真はなんだ?!

この一つの写真で俺はことさんに対する感情や思いがいっきに揺らぐ。

なんなんだ?この人。



    ーーーメッセージ内ーーー

《こうちゃん123》「あのこの写真ってことさんがとったんですか?」

《こと》「ええ。そうですよ!」

《こうちゃん》「僕も猫飼ってて、その、写真の猫とすごくにてるんです。」

《こと》「へぇ!そうなんですか。奇遇ですね」

   ーーーーーーーーーーーーー

いや…奇遇とかの話じゃない。

クロ…そのもの。いったいどこから流出した?!

SNSサイトからか?!いや…でも、俺は自分の撮った写真をどこかに載せるなんてことしたこともないし、やろうとも思ったことない。


この人は…何者なんだ?

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