3/19:この時限爆弾を、そっと
3/17
午前の出来事
・久々の学校で朝が辛かったです。それに探求の講義っていうのがあって、その名目が議論だったんですけれども、どうも講師の方が張り切りすぎているのかいまいち生徒の発表内容とはずれたダメ出しを繰り返すんですよね……。まぁありがたい機会なのに間違いはないのだけれども、発表内容のすり合わせはしておいてほしかったなぁ。私もああならないように気を付けないと。
午後の出来事
・うーん、部活で盛大に空振りしました。まあ数時間の調べものが必要ないものだったっていうだけで、そこまで気落ちするものでもないと言えばそうなんですけれどもね。でもいつか、この内容が役に立つことのあるように、きちんとメモは整理しておこう。
3/18
午前の出来事
・数学のテストもどきがありました。結果はどうだったって? ……へっ、確率全て間違えたっ(焦)。いや、こりゃあ……いかに復習が大事なのかを思い知らされます。とりあえずは復習をするためにも春休みの課題に手を付けることですね。誕生日以降予定がつまりにつまっているから、余計に。
午後の出来事
・クラスのみんなとしゃぶしゃぶに行きました。すっごく楽しかったけれど……後このクラスでいられるのも2日だけだと思うと、寂しいものですね。ま、ただのクラス替えで別れるだけなのでおんなじ学校内と言えばそうなのですが、今のクラスの雰囲気が良すぎたものですから。来年度もこんな素敵なクラスメートに恵まれますよう。
3/19
午前の出来事
・昨日と同じく国語と英語のテストもどきがありました。英語は……聞かないでくださいね。
あ、そうだ。テストもどきなのでアンケートがあって、そこで『最近読んだ本またはおすすめの小説を紹介しろ』っていうのがありまして。そこで木爾チレンさんの『神に愛されていた』を書いたのですが……皆さんも読んでみませんか? まぁ、最後まで読んだら感動するっていうよりもぞくってくるって言ったほうが正しいような、生々しいすれ違いの物語です。二面描写とでも言うべきか、二人の視点から一つの物語を見るのが何分好きな質たのも相まってか、どつぼにはまっちゃって。皆さんも是非!
午後の出来事
・部活で先輩への色紙を書きました。ひさびさにレタリングをやりましたよ、センスも何もない黒文字の表紙ですけれど、念ずれば届くと言いますし、それを祈っておきます。
あぁ……そういえば、昨日親にヴァイオレット・エヴァーガーデンを貸したんですけれど、私も読みたくなっちゃいまして。うう、あんな綺麗で、長文なのにスラスラ読める文はどうやったらかけるんだっ……。
<この時限爆弾を、そっと>
『クラスで打ち上げ行こ!』
そんなLINEが入ったのは2週間くらい前。今学期の自治委員の人が、クラス最後の思い出作りにと、企画してくれた。
日にちは3/18の火曜日。午前中授業だけれども、部活が午後まである人もいる都合上、一日通しの長い催しはできないからみんなでしゃぶしゃぶに。
『行きたい人はこのコメントにリアクションしてね』
その翌日。自治委員さんのコメントが上げられてから一日もたっていなかったのに、すでにクラスのほぼ3/4に当たる人たちがリアクションをしていたのには驚いた。
みんなが共同で何かを成し遂げるかのような、一体感。私たちのクラスの強みであって、そっと大切にしたいと思えるような空気感。
そんなものが私たちのクラスをを包んでいるような気がして。
ちくたく、ちくたく
けれどもこのLINEが意味するのは、終わりが近づいている時限爆弾のタイマーのようなもの。
時というものは無情に過ぎて、どこまで大切にしようとしても、使いつぶそうとしても、それは等しく過ぎ去っていく。
打ち上げ当日の今日は、終業式の3日前。間に祝日を挟むから、実質的にはあと2回しか学校に行かないことになる。
ちくたく、ちくたく。
それは神の気まぐれで作り出されたかのような、或いは必然的にそこにあるべきものだったかのような時限爆弾。
そしてそれが爆ぜるときは、いつの間にか目前にまで迫っていた。
◇◆◇
「お疲れさまでした~」
この日は珍しく部室を定時で出て、みんなとの集合場所へと足取り軽く歩いていく。
学校から駅前の集合場所までは、歩くと案外長くって、その一人が生む静けさの中に隠れた空白の時間が否応なしに思い出を反芻させる。
初めての共同作業と言えば、文化祭だろうか。フォトスポットを作ることになって、そのためのアイデアを出し合いながら役割分担をして。
交流の場を広げたことと言えば、終学活の時の個人発表だろうか。自らの好きを、何もはばからずに好きと叫べるその時間は、他人の一欠片を拾ったかのようで、どこかこそばゆかったのを覚えている。
みんな勉強に関しては表面上の愚痴はぼやいても、それを本質的に嫌っている人はそうそういなくて、学びを邪魔しないくらいの適度に刺激のある空気感がテスト前にはよく漂っていた。
運動にはそこまで積極的でなかったけれども、女子はクラス対抗の球技大会でみんな決勝戦まで勝ち上がって、ドッヂボールがそこまで強くなかったくせして綱引きだけは学内2位の成績を持っていて。バカ騒ぎをする友人もいれば、ホワイトデーやバレンタインデーに、お手製のクッキーだとかチョコレートだとかを持ってくる輩もいる。
ああ、そうだ。クラス内が一致団結したのはいつだろう。……そんなの、いつでもだ。私はその空気感を失いたくないと思うほどには、好いていた。
ちくたく、ちくたく。
これから待っているのはそんな幸せを共有した仲間たちだというのに、どこか寂しさをはらんだ虚しさが私を包む。別に何も、このクラスのすべての人との交友が途切れてしまうわけでもないのに、この気持ちは何なのだろう。
◇◆◇
集合場所についた時間は、18時48分。19時集合だから、少し早い。
ゲームセンターでも眺めて時間をつぶそうとした、その矢先。
「おーい」
後ろから声をかけられたので振り向けば、そこには見慣れた顔触れがそろっていた。そこには部活をサボって先に遊びに行ったクラスメートも。
「行こっか」
思わず私は呟いていた。何も、ここで話しているよりは、みんなで集まって残りの時間を大切にしようと思っただけだ。
◇◆◇
野菜を入れすぎだと愚痴られながら、鍋奉行に徹していた楽しいしゃぶしゃぶの時間も終わり、最後はみんなで集合写真を撮ることにした。
ちく、たく。
ああ、もう終わりか。
「はーい、並んで並んで」
「撮るよ~、身長高いと思う人は後ろ行って!」
へっ、クラス一のお調子者は、最後の最後まで変わりやしなくて。薄く笑うと地面が濡れているのにも構わず集合している真ん中で寝そべった。
ぱしゃり
赤い光が輝くのとともに、シャッターがきられる音がした。
お調子者が入っているだの、切れているだの、寝ている人はいないかだとか。
ちくたく、ちくたく。
この時限爆弾は解除できない。そして無情にも時は過ぎる。
いざ爆弾が爆ぜたその先になにがあるかなんて、私には到底分からないけれど。けれどもどうか、その先の未来が明るいものであることを私たちは祈るばかりだ。
一年を共に過ごしたクラスの中で、残された時間の短さを痛感した、そんな一日。
明日はどんな日になるのかな、でもとりあえず今日は、おやすみなさい。
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