第3話 魔法
そうして私とほのちゃんはイディオさんのラボ?にお世話になることになった。
もぐもぐとイディオさんが作ってくれたハンバーグを頬張る。
あまりのおいしさに夢中になって食べていた。
「ふっ。寧々、夢中すぎ!髪にソースついてるから!」
そうほのちゃんが言って私の少し長めな髪に手を伸ばす。
夢中すぎて気が付かなかったみたいだが赤色のソースが私の薄茶色の髪についていた。これじゃあ私の髪もハンバーグみたいになっちゃうよ
「あっごめん!ありがとう」
「いえいえ」
ふふふっとお互いを見て微笑み合う。
「ねーねー。一応僕もいるんだけど?2人だけの空間つくらないでよー。」
「ご、ごめんなさい。」
「見てて可愛いから別にいいけどー。さあて。君たちは確か僕に何か教えて欲しいんだっけ?」
そういえば魔法とか常識を教えて欲しいんだったと思い2人のお皿に目をやるともうすでに食べ終わっていた。ご飯を食べるのは遅い方だが、このままでは全然話を聞けないかもしれない。そう思い慌てて箸を進める。
「寧々。落ち着いて食べないと詰まらせちゃう…」
「んっ!!ゲホッゴホッ!」
「言わんこっちゃない。」
ほのちゃんが注意し終わる前にんお度に詰まらせてしまった。
こう言うヘタレなところは異世界に来ても何も変わっていないんだなあ。
「ご、ごめん。食べてるから話してていいよ」
「んー。魔法は実践しながら教えたいし、今は寧々ちゃんがご飯を食べ終わるのを待つよ。その間に君ら2人のことを教えて欲しいな」
「私たちのこと?」
キョトンとする私とは対照的に話の意図を理解したのか、ほのちゃんが話し出す。
「私たちが元いた世界のことを知りたいの?それってもしかしなくても研究者としてよね?研究のためよね?」
ビリビリとした雰囲気は私でも感じ取れた。ほのちゃんは優しくても悪意のある利用のされ方は好まない。むしろ大嫌いだ。
「へー。ほのちゃんって頭いいんだね。ちょっと。いやかなり意外だったかも。まあいいや、そう言うわけだから。教えてよ。」
「私は自分から研究材料になりたくはないんだけど。まあ、魔法を教えてもらう等価交換のようなものよね。」
ほのちゃんはふうっとため息をつく。
「でも約束して。私たちのプライバシーは約束して。私達は落ち着いて生活がしたいの。」
「それはもちろん。そもそもこのラボの場所自体知ってる人は誰も…。うん。誰もいないからね。」
「そう。じゃあいいわ。何が聞きたいの?」
「そうだね。まず前の世界の名前と、住んでたところ、あと、ここにきた理由を教えて欲しいな。」
「私たちがいた場所は地球っていう惑星で、日本っていう国に住んでた。ここに転生された理由は交通事故にあったからよ。」
イディオさんはほのちゃんの説明をふんふんと頷きながら話を聞いている。
一方私はもぐもぐとやっと後半に差し掛かったご飯を食べながら2人の様子を見ていた。話を聞いている限り違和感のない会話をしている、はずなんだけど。
うーん。なんか違和感があるんだよねー。何かはわからないけど。
じっとイディオさんのことを観察してみる。
よく観察してみよう。よく見て。何か違和感の原因を探るの。
イディオさんは今何してる?ほのちゃんの話を聞いてる。
何のため?研究のため?研究するために必要なものって?
あ、あった。研究に必要で、今ここに足りないもの。
「イディオさんはメモ取らないんですね」
「…え?メモ?」
ほのちゃんが不思議そうに聞き返す。イディオさんは少し驚いたような表情をしていた。2人の様子を視界に入れつつ私は続けた。
「うん。メモ。だって今研究のために私達に話を聞いてるんでしょ?だったら正確に記録するためにメモ用紙くらい用意するものじゃない?」
「…確かに」
「へえー。ほのちゃんの賢さに加えて寧々ちゃんは目がいいね。すごいすごい。」
イディオさんに褒めてもらって少し嬉しいようなほわっとした気持ちになる。
イディオさんは頭をかきながら続けた。
「別に隠すつもりはなかったけどね。気が付かれるとは思わなかったな。そう。寧々ちゃんのいう通り。メモ一つ取らないで覚えていられるのは僕の特殊スキル[記憶]のおかげだよ。耳から聞いた情報。音。会話。目で見たもの。全てを記憶しておくスキル。」
「すべてを…記憶…。」
「おや?何かまずいことでもあったかい?」
「特にはないと思うけど…ねえ?ほのちゃん?」
ほのちゃんは何やら目を泳がせた後私達に視線を戻した。
これはほのちゃんが何も聞いてほしくない時の仕草だ。
だから何も聞かないでおこう。
「うん。特にないよ。あ、それより特殊スキルについて教えてよ。私達にも何か備わってるらしいんだけどわからないんだよね。」
「特殊スキルは生まれた時に備わっていて大抵遺伝が強いらしい。僕は突然変異種だったらしいけど。転生者の場合は前の記憶が関連していることもあるらしいよ。」
「前の記憶かあ。特に思い当たる節もないなあ。」
「私も。」
思い当たる節も何も私は一般的な女子校生で特筆したものは何もなかったしなあ。
それに比べてほのちゃんは思い当たる節しかない。なんでも人並み以上にこなせる天才。だからこそ何スキルを持っているかなんてわかりっこないよ。
「あれ?君らもしかして自分のステータスの確認の仕方も知らない感じ?」
「え、ステータスって自分で確認できるものなの?」
初耳すぎる。本当に何も教えてくれなかったんだなあの女神。
「『ステータス表示』っていうと自分の目の前に自分のステータスが表示されるよ。ちなみに自分以外からは見えないから安心してね?」
わくわくしてきた。だってやっと自分のステータスとかを知れるんだもん!
ほのちゃんも試してくてうずうずしている。
よし、早速やっちゃおう!
「『ステータス表示』!」
私の目の前がぽわっと光出す。そして次の瞬間には私のステータスが表示されていた。
「…おおおお!!すごいすごい!本当に自分のステータスが見れちゃう!」
私の目の前に表示されたステータスはまるでゲームの世界のようだった。
私の冒険心をくすぐるようなそんなステータス表示のしかただった。
ネネ・イナバ
レベル1
魔法属性 ・水
魔力量 ・40/40
スキル ・テイム
特殊スキル・動物
え?待って待って。特殊スキル動物って何。どんな異世界転生ものの漫画でも聞いたことないんですけど。異能力すぎるでしょ意味わからんくてびっくりするわ。確かに私は前世でたくさん動物に関わってきたけど。
私の家はお母さんが動物園で働いていたからいろんな動物と接する機会は確かに人より多かった気がする。にしても理解はできないけど。
ほのちゃんはどうなんだろう?
「あ、ちなみに。ステータス全体表示っていうとその場にいる人全員がその人のステータスを見ることができるよ。」
なんといういい情報を!私はほのちゃんのステータスが見たい!!という気持ちを込めてほのちゃんに視線を送る。
「わかったよぉ『ステータス全体表示』。」
おおお!本当にほのちゃんの目の前にステータスが現れた!私にも見える!
「なんかちょっと恥ずいわ、あとで2人とも私にステータス見せなさいよね。」
「はあい。」
少し切れた様子でほのちゃんがいう。私はそれを適当に流してからほのちゃんのステータスを見た。
ホノ・ハヤシダ
レベル1
魔法属性 ・風
魔力量 ・100/100
スキル ・剣技
特殊スキル・調達
待って魔力量の差よ。私と何があったから50以上も離れちゃったんだよ。
スキル剣技もカッコ良すぎるし、
「へえー戦闘特化の能力じゃん。いいねえ、僕も研究者らしい能力だったからなあ」
「イディオさんはどんな能力なんですか?」
「僕?僕は…まあいっか僕も能力を開示しようかな。」
イディオさんは少し悩んだ末に私たちに能力を明かしてくれると言った。
まあ確かにこんな怪しい人間に能力開示なんてしたくないだろう。あってまもないから信頼度とかもないだろうし。でも、開示してくれるってことは多少は信頼してくれてるのかな?それともただ舐められてるだけなのかな。どちらにせよ私は彼のステータスが気になってしょうがなかった。
「ステータス…」
イディオさんがそこまで言いかけた時だった。突然扉の方から大きな音がして人がはいってくる気配がした。
「おい!イディ!能力開示はやめろとあれほど言っただろ!!」
威圧的な怒鳴り声を上げながら入ってきたのは筋肉質の男の人だった。髪は金色でところどころ傷んでいる感じがする。服装はボロボロでいかにも今戦ってきましたみたいな格好をしている。気品のある顔立ちをしている。貴族みたいだ。
「やあ久しぶりだねオリバー。毎回急に来てくれてどうも。」
イディオさんは少し嫌味のこもった様子で物をいう。
笑顔からは圧が感じられて少し怖い。
「当たり前だろ。こいn…」
「ストップ。客人がいるんだぞ。そういう話はダメだ。」
「わあったよ。」
イディオさんがオリバーという人を制止する。急に入ってきたからびっくりしたけど悪い人じゃないのかな?そんなことを考えているとほのちゃんが口を開いた。
「別に隠すことないじゃない。恋仲なんでしょ?」
「え!?そうなんですか!?」
私は全く予想していなかったので慌てて聞き返す。
オリバーさんはイディオさんに少し目配せをすると焦ったように隠し始めた。
「いいいいや別に恋仲とかいうそういうんじゃないぞ!?そのただ、他の奴らより少し仲が良いだけで…」
「いや確定でしょ。隠すの下手じゃん。」
慌てふためくオリバーさんにほのちゃんの厳しい一言が響く。
オリバーさんの心にダイレクトヒットしたらしくがっくりと項垂れる。
「なんでばれたんだ…」
「いや、さっき自分で言いかけてませんでした?」
「うぐぐ。」
「はいはいそこまで。めんどくさい言い合いはなしね。僕そういうの苦手だからさ。君が一番わかってるでしょ?オリバー。」
イディオさんがいうと2人ともスンと静かになった。
イディオさんってすごいんだなあ。
「僕らの関係は今オリバーがバラしちゃった通り恋人さ。そしてオリバーは貴族の子供だ。三男だから騎士団長に当てられている。オリバーの説明はこれくらいでいいか。」
イディオさんが適当に済ませる。あまりの雑さに情報がほとんどおちてなかったんですけど。イディオさんオリバーさんに対する当たりが厳しいよぉ。
そう思っていると不安げな表情でオリバーさんが続けた。
「お、お前ら引かないのか?その、俺らが付き合ってるって知って…。」
優しい恋人とダメな私の異世界スローライフ。〜どこに行ってもあなたが一番好き〜 琥珀結玲 @kohaku_pinnku
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