第4話 最前線部隊②
「あ、あの、えっと……」
魔法学校や訓練中の間、女性と話すことはたくさんあったから、特別女性と話すことが苦手というわけじゃない。
けど、魔法学校でも訓練中でも、ここまで軍の厳格な雰囲気に沿わない雰囲気で、女性たちが目の前で話している。
ということは一度も無かったため、僕がどうにか口を開こうとするも言葉を詰まらせていると。
「フィンくん」
隣に居るエレナさんが、僕に声をかけてくださったため。
その顔を見ると、エレナさんは優しい表情で。
「さっきも言った通り、みんなフィンくんのこと受け入れてくれたでしょ?誰もフィンくんのこと、見捨てたりなんてしないよ」
「エレナさん……」
さっきまで死の淵に立っているような気分だった僕は、そのエレナさんの言葉によって改めて救われた気持ちになった。
でも、そんな僕の気持ちとは反対に、部隊の人たちがエレナさんに向けて力強く。
「エレナ先輩!なんですか、その足元見たような励まし方!」
「そうですよ!見捨てないどころか、大歓迎ですよ大歓迎!!」
「待って待って、もちろん私だってさっき初めてフィンくんと会った時大歓迎だって言ったよ?ただ、フィンくんが私たちに見捨てられて命を落とすぐらいまで覚悟決めてたっていうから、そんなこと無いよって言いたかったの」
「敵と戦ってならともかく、私たちに見捨てられて……?」
「テラウォードくん、どうしてそこまで思い詰めてたの?」
「そ、それは……」
エレナさんにお話しして、誤解だということがわかっているから。
ここで掘り返す必要は無いとも思ったけど、僕のことを気遣って聞いてくださっているのに隠し事はしたくない。
僕は、静かに僕の言葉の続きを待っている皆さんに向けて。
「実は、上官からみなさんが男嫌いだという話を聞かされて……僕は訓練生でまだ力もないので、最前線で一人で生き残ることもまずできないと思っていたというか、それは今でも思っているので、死を覚悟してたんです」
僕がそう伝えると、皆さんは少し間を空けてから各々話し始める。
「私たちが男嫌いって……私たちが男嫌いだから、自分たちが私たちと上手くできないのも仕方ないみたいな言い訳にしか聞こえないんだけど。あいつら、自分の方に問題があるとは考えないのかな」
「現に、男の子で初めてだけど、テラウォードくんには私たち嫌悪感なんて一切無いしね……ていうか、それをテラウォードくんに言ったってことは、あいつら自分とテラウォードくんを性別だけ同じだからって同じ
「
「本当それ!それでテラウォードくんのこと思い詰めさせてたとか、ありえない!」
各々で話し始めているから、何を言っているのかは聞こえなかったけど。
僕は、まだ皆さんにお伝えしたいことがあったため。
「ですけど!」
大きな声で言うと、皆さんが一度静かになってくれたため。
皆さんのことを見渡しながら、僕は続けて言う。
「こうして実際に皆さんとお会いして、皆さんが僕のことを受け入れてくださったおかげで、僕は今これからのここでの生活が楽しみな気持ちでいっぱいです……もちろん、楽しみとは言っても軍務なので真面目にしますけど、とにかくお伝えしたいのは────」
皆さんに対して、頭を下げて。
「僕のことを受け入れてくださって、ありがとうございます!皆さんの優しさに甘えることなく、むしろそんな皆さんのお力になれるよう精進するので、先ほどもお伝えしましたが、改めてこれからよろしくお願いします!」
今度こそ、伝えたいことを全て伝え終えると。
皆さんは、僕との距離を縮めてきて。
「うん!これからよろしくね、テラウォードくん」
「よろしくであります!」
「よろしく。困ったことあったら何でも聞いてね」
「っ……!はい!」
死地の最前線で戦っている、ルーヴァンクルム帝国軍最強の最前線部隊。
ついさっきまでは、どんな人たちなんだろうと不安に思っていたけど。
皆さん……本当に、とても優しい人たちばかりだ。
文字通り、その優しさが身に染みるように感じていると。
隣のエレナさんが、僕に向けて明るい声色で。
「そういえば、フィンくん気配の消し方上手だったね!私驚いちゃったよ!」
「ほ、本当ですか!?」
「うん!ね、みんなも気づけてなかったでしょ?」
「確かに!色々感情の動きが激しすぎて忘れてたけど、そうでした!」
「そうでしたね」
このルーヴァンクルム帝国最高戦力のお一人であるエレナさんや、最前線で実際に戦っている人たちから、そんなことを言っていただけるなんて……!
こうして優しく褒めてもらうことには慣れていないため、僕は少し照れながら。
「あ……ありがとうございます、嬉しいです……」
「っ!!」
感謝を伝えると、皆さんは小声で耳打ちし合うように何かを言い合う。
「ねぇ、今のテラウォードくんの顔見た?」
「可愛すぎるんだけど……!」
「色々やばいかも……」
僕の言葉を
「皆さん……?どうなされたんですか……?」
僕がそう聞くと。
皆さんは、なんでもないという風に慌てて首を横に振った。
そして、その空気を変えるように、お一人が口を開いて言う。
「テラウォードくん!私、テラウォードくんのことテラくんって呼んでも良い?」
「え……?」
あだ名、みたいなものかな?
「何それ!?」
「可愛い!」
「私も呼びたい!」
「え、えっと、お好きに呼んでいただければ……」
どうして皆さんが盛り上がっているのか、わからなかったけど。
特に呼び方に執着は無いため、僕がそう伝えると。
エレナさんが大きな声で。
「は〜い!みんな、フィンくんとはこれから毎日一緒に生活できるし、フィンくんにも拠点の中案内してあげたいから一旦拠点に────」
「お待ちください」
エレナさんの声を遮るように、少し離れたところから力強く芯のある女性の声が聞こえてきた。
と思ったら、少し離れたところにある木の裏から。
とても綺麗な金髪の女性が、
「……っ!」
その女性の胸元を見た僕は、思わず驚きの声を上げる。
あれは……ルーヴァンクルム勲章。
つまり、この人は────エレナさんと同じ、このルーヴァンクルム帝国軍最高戦力の四人のうちのお一方……!
そのことに気がついた僕が、一気に緊張感を増していると。
目前にまで歩いてきたその金髪の女性に向かって、エレナさんが口を開いて。
「セフィアちゃん?どうしたの?」
この金髪の女性は、セフィアさんというらしい。
「フィンさんが男性であることや、訓練生であるにも関わらず、最前線部隊に身を置くことに対しては人格を拝見させていただいたところ異論ありません。先ほどの気配の消し方も、訓練生とは思えぬほど素晴らしいものでした」
ですが、と続けて。
「この最前線に身を置く以上、最低限の力は必要となってきます。もしフィンさんにその力が無ければ、この最前線部隊に身を置くことは許可できません」
厳しいことを言っているように聞こえるかもしれないけど、この人の言っていることは正しい。
実際、足を引っ張ってこの部隊の人たちに迷惑をかけてしまわないかは、今もなお不安に思っている。
「まぁ、訓練生が仮とはいえ最前線部隊に送られてくるなんて、前代未聞だからその辺りの見極めが重要なのはわかるけど……セフィアちゃんは、どうやってその力を確かめるつもりなの?」
「簡単なお話しです。今から、フィンさんには目の前に無数の敵が居るという仮定で、全力の魔法を見せていただきます……もちろん、私のように剣に魔力を込めて戦われるのであれば、剣を使用していただいても構いません」
……全力の、魔法。
「いかがですか?フィンさん」
全力なんて、もう長い間出してないから、自分でもどの程度の魔法が放てるのかわからない。
だけど、僕は……僕は、ここに居たい。
僕のことを受け入れてくださった皆さんと、この国を守りたい。
だから。
「わかりました」
僕がそう返事をすると、エレナさんやセフィアさんを含めて、皆さんが僕の後ろに回る。
「……」
前方を見ながら、僕はゆっくりと目の前に右手をかざす。
さっきまでは色々とありすぎて浮き足立ってしまっていたけど、今は軍務中。
それも、セフィアさんから仮定条件として出されたのは、目の前に無数の敵が居るという状況。
それはつまり、今から命のやり取りをするということ。
────感情を殺す。
ルーヴァンクルム帝国のために、この部隊の人たちのために。
軍人として、その務めを果たすために。
自分の顔つきが、先ほどまでとは全く違うということが、鏡も見ていないのによくわかる……でも、そんなことは気にしない。
今はただ、全力を。
そう念じながら、右手に魔力を込め。
一度に放てる最大限の魔力が右手に集まったところで。
僕は、その魔法を発した。
「
────次の瞬間。
烈風が吹くと、前方に見える木の葉が全て舞い上がり。
木々も宙を舞って、少しの間空中を浮遊した後で地面に落下した。
魔法を放ち終えたので、僕が後ろを振り向くと。
皆さんは、
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