第3話「嫉妬の余韻、隠せない気持ち。」
一は、デスクでスマホの通知を確認した。
「新規プロジェクトメンバーに選出、おめでとう!」
営業部のチャットグループには同僚たちから祝福のメッセージが溢れていた。
一が参加することになったのは、新しくオープン予定のリゾートホテル「オーシャン・グラン・リゾート」の広告プロジェクト。
これは会社としても非常に重要な案件で、社内では“選ばれたら出世確定”とまで言われるほどだった。
「やったな、一!」
背後から
彼はいつも通りのラフなスーツ姿で、屈託のない笑顔を浮かべていた。
「ありがとうございます」
「いやー、お前もついに俺たちのチーム入りか!先輩として可愛がってやるよ!」
「……よろしくお願いします」
それから数分後、プロジェクト初回の社内会議が始まるという連絡が入り、一は
会議室のドアを開けると、すでに数人が着席していた。
そして、その中にリノの姿があった。
(リノさん…!)
思わず心の中で名前を呼ぶ。
まさかまた一緒に仕事をすることになるとは。
「今回のプロジェクトには、ライティングやコンテンツ制作の観点から工藤さんにも協力してもらうことになった」
リーダーの九条がそう説明すると、リノは静かに微笑んで軽く会釈をした。
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします、工藤さん。」
リノと一緒に仕事ができることに嬉しさを覚えると同時に、一は九条とリノが親しげに話す様子に、どこか落ち着かない気持ちを抱いていた。
九条は既婚者でありながら、周囲の女性社員からの人気が高い。
彼のスマートな立ち振る舞いと圧倒的な営業力は、尊敬に値するものだった。
しかし、リノと話している彼の表情は、どこか特別な親しみを感じさせるものだった。
(何を考えてるんだ、俺は……)
打ち合わせが進むにつれ、一は仕事に集中しようとするが、どうしてもリノのことが気になってしまう。
——リノさんも、この仕事を楽しみにしているだろうか。
「それじゃあ、今日のミーティングはここまでにしよう。」
九条の言葉で、会議は終了した。
リノが会社から出て行くのを見送った後、一は自分のデスクに戻ろうとした。
しかし、その時——
「なぁ、一。お前、もしかしてリノさんのこと好きなの?」
高橋がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「……どうしてそう思うんですか?」
「お前、今日ずっとリノさんのこと見てただろ?あと、九条さんと話してるとき、めちゃくちゃ落ち着きなかったぞ?」
「そ、そんなことは……」
「はははっ!図星か?いやー、お前みたいな無口でクールな奴が恋愛でオロオロするの、めちゃくちゃ面白いな!」
「……そんなわけないです。」
「まぁ、そういうことにしといてやるよ。でもなぁ……お前、意外とわかりやすいぞ?」
高橋の言葉に、一はぎくりとした。
(俺の気持ちって、そんなにわかりやすいのか……?)
リノに気づかれていないことを願いながらも、一はもどかしい思いを抱えたまま、オフィスの窓の外を見つめた。
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