第11話  そして、こうなった

 うぅ……高校へ入学して間もなく、保護者呼びつけの刑に合うなんて……

 やっぱり、じいちゃんのところに戻るべきか?


 俺は、本気で考えていた。


 太蔵さん……もとい、お父様が直々に学校に来るなんて……

 担任の先生の方が恐縮していた。ブルブルと震えて、面白かった。


「先生、ピカチュウの成績は長い目で見てやってください。夏休みまでには追いつくでしょう」


「赤点は問題ですが、入学直後の実力テストですから、それほど問題ではありません。問題は、マンガを持ち込んで一人で引き籠ってることです」


 先生は、やっとのことでそれだけ言った。

 太蔵さんは、表情一つ変えずに、


「ピカチュウの名前が悪目立ちしましたかな?」


 そう思ったんなら、改名を許してくれよ!! 太蔵さん。

 太蔵さんは、隣に座っている俺をジロリと見てきた。


「非常に、目立ってますよ。悲しい思いをするのは彼ですよ」


「そうですか……こちらにもタイミングというものがありましてな」


 タイミング……? なんのだろう?


 俺は、これから漫画を持ってきたら、取り上げるぞっと注意を受けて解放された。


 帰り際、太蔵さんに頭撫でられた。


「もう少し、ピカチュウでいろ。その方が、ワシの仲間に名前を覚えてもらえるでな」


 なんつ―ことを言うんだ!! 太蔵さん!! 太蔵さんの仲間って財界の人か、ゴルフ仲間だろう!!


「それにしても、成績を上げんとな~~ 短時間集中型にしよう。それから、漫画も取り上げだ。成績が上がるまで、お前のいう聖地巡礼も禁止だ」


 俺は、もう、目の前が真っ暗になった。

 何がなんでも、成績を上げるしかないんだ。


「ところで、ピカチュウ……」


 一人で黄昏ていたら、太蔵さんが話しかけてきた。


「何……」


「お前、見合いをせんか?」


「なんで~~~~??」


「櫻子が、逃げおったわ!!」


 太蔵さんは、本気で怒ってるのが分かった。

 でも、昨日まで櫻子さん普通だったけどなぁ~~??


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